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魔性の月 The Secret Moon 4


豹変



逃げようと踵を返した唯の腕を彼が掴み、有無を言わせず引き寄せる。そして唯はそのままきつく抱きしめられた。彼の体からは優の香りがして、思わず錯覚しそうになってしまう。

目を閉じて、ずっとこのままでいたい。
彼の腕の中で、ついそう考えてしまった唯だったが。

「愛してるよ、僕の唯」

彼の言葉にはっと我に帰る。

違う、この人は月島くんじゃないんだ、逃げなきゃ。

唯は彼の腕から逃れようともがいた。

「どうして逃げるの、君はずっと僕のことが好きだったんだろう」
「違う、わたしの好きな月島くんはあなたじゃない!」
「ふうん・・・。どうあっても僕を拒否する、と・・・。そうか、じゃあ仕方ないね」

彼の言葉はぞっとするほど冷たかった。

「力づくってのは僕の趣味じゃないけど」

言うなり、彼は唯にのしかかり後ろのテーブルに押し倒した。
彼の手が唯の両手首を掴み、縫いとめる。圧倒的な力の差に唯はなすすべもなかった。

「イヤ、放して!」

必死にもがくが逃れることなどできるはずもない。

「大人しくしてくれないかなあ。君に痛い思いはさせたくないんだ。愛しているからね。大丈夫、力を抜いて身を任せていればいい。そうすればすぐに君を天国へ連れていってあげる・・・」

唯は激しく頭を振った。

「いいんだよ、僕のことを愛してなくても。今、君が僕じゃなくて優に抱かれるんだと思っていても、それでもかまわない。僕はどうしても君が欲しいんだ、唯」

彼の蠱惑的な言葉、それは悪魔の囁きだ。

・・・この人はどうして月島くんと同じ姿で同じ声なんだろう。

いや、それだけではない。確かに優と同じ声なのだが彼の言葉は甘美な毒を孕んでいて思わず身を任せてしまいそうになる、堕ちてしまいそうになる。
いけないとわかっていながら誘惑に負けて禁忌の箱を開いてしまったパンドーラのように。


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