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Sweet Message 9


Sweet Message 9

5分ほど歩くと、小さな児童公園に着いた。もうすっかり夜だから誰もいない。
あたしたちは街灯の下にひとつだけぽつんと置かれているベンチに並んで腰を下ろした。
なんかデートしてるみたいで落ち着かない。ついさっき失恋したばかりの相手なのになにドキドキしてるんだあたし。

「えーと、用って?」
「これ!」

香住は持っていた白い箱をあたしに差し出した。

「え、あたしに?なにこれ?」
「開けてみろよ」

香住に促されて箱の蓋を取ると中から現れたのは小さめのホールケーキだった。
真っ白なクリームにピンクのハートチョコがふたつとラズベリーとブルーベリーが載っている。すごく可愛いデザインだ。

「うわあ、可愛いしおいしそう。もしかして香住が作ったの?」
「ああ、あれからうち帰ってダッシュで作った」

あれからって、また思い出してしまった。恥ずかしいからやめてほしいのにー。

「あは、チョコのお返しとか?義理堅いのもほどがあるよ。それにホワイトデーは1ヶ月先だし」
「1ヶ月も待てなかったんだ」
「は?」

待てなかったってなんで?

「それさ、まだ未完成なんだ。最後の仕上げ、美月に手伝ってほしくて来た」
「あたしに?」
「そう」

手伝えってどうして。ん、今「牧野」じゃなくて「美月」って呼ばれた?そういやさっきの電話もそうだったような。

「これが仕上げのパーツ」

そう言いながら香住が取り出したのは星型のクッキー。物理のテストのことで凹んでいたときに香住がくれたことを思い出す。あれはプレーンだったけど今度のはココアクッキー。バレンタインだからかな。

「一つずつ、ケーキの空いたスペースに飾っていってくれ、順番通りに。これがひとつめ」

手渡されたクッキーにはホワイトチョコで「み」という文字が書いてあった。それをケーキの上に貼り付ける。うん、ますます可愛い、香住、センスあるなあ。
香住が次のクッキーを渡してくれる。「づ」だ。あれ、これもしかしてあたしの名前?
やっぱり次は「き」だった。あたしが何なんだろう。
そして次の文字は「す」
え・・・?まさか。
心臓が破裂しそうに高鳴った。
次の文字は
「き」
う、うそ、こんなのありえない。

「これで最後」

香住に手渡された最後の文字は「だ」

「はい完成!」

真っ白なクリームの上に載ったココアクッキーに書かれた文字、続けて読むと
「みづき すきだ」

「あああああ、あの・・・」

あまりびっくりしすぎてまともに喋れなくなってしまったあたしを見て香住はにっこり微笑んだ。

「この時間でこれ作っておまえの家まで来るのすげえ大変だったんだぜ」
「あ、うん。そうだよね、ありがと」
「それで返事は?」
「返事ってあの、でもそのなんで?」
「なんでって?」
「香住が好きなのは山本さんなんじゃないの?」
「は?なんでってこっちが聞きたい。どうしてここに山本が出てくるんだ」
「だってさっき山本さんとサイン交換してたからてっきり」
「サイン?」

香住は首をかしげている、どうやらほんとに心当たりがないらしい。

「山本さんからもらったチョコ見て、親指立ててたでしょ。でもって山本さんがVサイン返してて」
「あ、ああ、思い出した。あれか。あれはさ、山本がバレンタインにケーキ作って松永に渡したいから協力してくれってオレに相談にきたんだ。で、丁度調理実習でロールケーキやるからその時に教えてやるってことになって。もしうまくいったらお礼にチョコくれって約束したんだ。でもって山本からチョコが来たから、うまくいったんだってわかってさ。やっぱ自分の特技が人の役に立つと嬉しいじゃん」

な、なんだ。あれはそういうことだったのか。あたしったら早とちり。

「でもそれを言ったらあたしにだってチョコの作り方丁寧に教えてくれたじゃん。それってネタバレでしょ」
「ネタバレって。まさかオレにくれるなんて思ってなかったんだよ。あのときオレがどれだけ切なかったかおまえにわかるか?好きな子が他の男にやるためのチョコを作る手伝いをしてるオレって何なんだろってさ。でも男だし、ここは辛さをぐっと堪えておまえの幸せを祈ろうと」

え、そういうことだったの?何かお互いいろいろ誤解があったようだけどこれってつまり。

「あの、今オレものすごく不安なんだけど。さっきオレにくれたチョコとエプロンの意味ってただのお礼ってこと?」
「ううん」

どーしよ。嬉しくてどうしたらいいかわかんない。
でも、今度こそちゃんと言わなくちゃ。
生まれて初めてのバレンタインの告白。

「あたし、か・・・祐介のことが好き。あたしが作ったエプロンつけてまた一緒に料理作りたい」

そう一気に言ったら・・・

「オレも!」

香住、ううん祐介はそう言ってあたしを抱きしめた。
すごく幸せな気分であたしは祐介の胸に顔を埋める。
甘いバニラの香りがした。


ハッピーバレンタイン。
今日、世界中の恋人たちがこんな幸せな時を過ごしているんだろうな。
胸いっぱいにバニラの香りを吸い込みながらあたしはそんなことを思っていた。


                                  END



今回で完結です、読んでくださった方、どうもありがとうございます。
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