虹色マカロン  Part1  I want 「to」


ホワイトデーの話で、(恥ずかしい)バレンタインの話「Melting Chocolate」の続きです。
(出来れば)感想とか、アドバイスとかいただけるとすごく嬉しいです。



虹色マカロン



「え、今日?ごめん、これから中学のときの友達と会うんだ。久しぶりだし」
「いや、いいよ。じゃあまた今度」

3月11日、木曜日。
いつもの帰り道、夕飯の誘いを断られ、俺は少なからず落胆していた。
久しぶりなのはこっちもなのにな、と内心思いながら。

地獄から天国、の気分を味わったバレンタインからもうすぐひとつき。
めでたく「友達」から「彼氏」に昇格できた俺だけど、実際、彼女との関係はそんなに劇的に変わったわけではなかった。

俺は親元を離れて一人暮らしをしている学生だ。家はごく普通のサラリーマン家庭で、とりたてて貧乏ではないが、かといって裕福でもない。
当然、仕送りだけでは食費と住居費、光熱費を払うだけでも結構きついから、週に3回、近所の進学塾で、チューターのバイトをしている。
そして、2月、3月といえば、受験シーズン真っ只中である。
補習だの特別授業だのがやたらにあり、起きて、学校行って、帰ってきたら塾に直行、家に戻れるのは夜の10時すぎ。その後に自分のレポートや後期試験の勉強→初めに戻る。
という日々が続いていて、せっかく両思いになれたというのに、ろくにデートも出来なかった。
その間、彼女は文句ひとつ言わず、ずっと待っていてくれた。
そして、ようやく受験シーズンも終わりに近づき、どうにか単位も予定通りに取れそうだという目途がたった。
今まで会えなかった分、毎日でも会いたい、と思っていたところなのに・・・。

「最近ずっと忙しそうにしてたから、平日、暇になるなんて思わなかったの」

うん、その通りだ。彼女は正しい、決して俺が不満を言える立場じゃない。

「だから、明日も友達と買い物行く約束してるんだけど・・・」

そうですか。
今まで放っておいた手前、何もいえないけど、正直、ここでその追い討ちはきつい。

「でも、土日はどっちも空いてるから、会えるかな」

思わず彼女の顔を見つめる。と、彼女は小首をかしげ、にこっと微笑んだ。

「それともまだ特別講習とかある?」
「いや、ない。春休みまで何も」
「じゃあ、土日、どっちか会う?どっちがいい?」
「どっちも!」

思い切り勢い込んで答えてしまった。
彼女はびっくりしたように俺の顔を見つめている。今まで放っておいたくせにあつかましいと思われたかな。

「いや、どっちか都合のいいほうで・・・」

そう言いかけると

「いいよ」

と、彼女の明るい声が返ってきた。

「じゃあ、13日と14日。時間とかはまた夜にメールするね、じゃあ」

いつの間にか駅に着いていた。
手を振りながら改札をくぐる彼女に手を振り返す。週末会えるとわかっていても、ちょっと淋しい。
片思いだったときは、見ているだけで満足だったけど、気持ちが通じるとどんどん欲張りになっていく。もっとずっと一緒にいたい、距離をゼロにして抱きしめたい。
ここがアメリカやヨーロッパだったら、改札口越しにお別れのキスとかするんだろうな。でも、ここは日本で、俺は典型的な日本人で、そんな大胆なことするのはやっぱり無理で。
彼女の姿が電車の中に消えるまで、ずっと手を振っていることしか出来なかった。

土曜日と日曜日、どっちも会えるのは嬉しい、
けれど、出来たら、土曜日「と」日曜日じゃなくて、「to」だったらもっといいのに。
Saturday to Sunday 
途切れることなく一緒に過ごせたら、と、つい思ってしまうのは贅沢すぎるんだろうか。


つづく

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

虹色マカロン Part2 マカロン

とにかく予定を入れておこう。
俺は携帯を開いた。3月13日、と14日。
ん、14日?忘れるところだった、ホワイトデーだ。
バレンタインのお返しをする日。

バレンタインデー当日の午後。
あの時、灰色の景色の中、浮かび上がったあざやかな赤色。初めて触れた唇は冷え切って氷のようだったけれど、それがだんだん温かく柔らかくなるまでずっとキスし続けていた。一生の記念にしたいくらい大事な思い出だ。
あの日もらった手作りのトリュフチョコのうち、ひとつはどうしても食べることが出来ずにまだ大切にしまってある。
あれのお返しって何を贈ればいいんだろう。
まさかこっちも手作りってわけにはいかない。料理は得意じゃないし、第一お菓子って何で出来ているのか、材料が皆目わからない。
とりあえず、デパートの地下に行けばそれらしいものがあるだろう。彼女が気に入りそうなものが見つかるといいけど。それに、一応もらった義理だか友だかのお返しは明日返さないと後が怖い気がする。
街へ向かうため、切符を買って、電車に乗り込む。
もう少し早く気付いていれば、あと少しだけ一緒にいれたのにな・・・。


平日のわりにデパートは結構込んでいた。
お菓子のおいているフロアはやっぱり女の子が多くて、少し気恥ずかしい。
クッキー、ホワイトチョコ、マシュマロとかが定番なのかな、あんまり食べたことないから、どれ買ったらいいのかわからないけど。
何気なく売り場のショーケースを覗いていると、今まで見たことのないお菓子が目に止まった。
クッキーをふたつ合わせたような形なんだけど、色が豊富で、カラーパレットみたいだ。見たところ、たぶん10色以上はあるだろう。

「いかがですか?」

しげしげと眺めていたら、売り場の女の人に声をかけられた。

「あの、これ何ですか?」
「マカロンでございます」
「マカロン?」
「フランスの焼き菓子で、今とても女性に人気があるんですよ。プレゼントにも最適です」
「へえ・・・」

形も可愛いし、これだけ色がきれいなら、確かに女の子が好みそうだ。

「ホワイトデーのプレゼントですか?」
「あ、はい」
「でしたら、こちらがおすすめです」

店員の女性はパンフレットを開いた。
六角形の容器に、真ん中にひとつ、周りに6つ、合わせて7つのマカロンが、ちょうど花のような形に並んでいて、とても可愛らしい感じだ。
彼女のはしゃぐ姿が目に浮かぶような気がする。

「じゃあ、これでお願いします」
「かしこまりました。では、マカロンをお選びください」
「はい」

とは言ったものの、何を選んだらいいのかさっぱりわからない「フレーズ」とか「シトロン」とか、一体何の味なんだろう。

「迷ったときは、色で選ぶといいですよ。詰め合わせたときにきれいなように」

なるほど。

「じゃあ、そこの赤いのとピンクと、この黄色と・・・」

どんな味なのかわからないのも楽しみでいいかな、女の子ならわかるものかもしれないけど。

「それから、このクッキーを5個お願いします」

明日のお返し用のものも一緒に買って、結構大きめの紙袋受け取る。
そのとき、

「橘くん?」

女性の声だ。振り返ると、同じゼミをとっている子だった。

「中川さん・・・」

中川 碧、長い黒髪のちょっと神秘的な感じの美人で、頭もいい。スタイルも抜群で人気があるけど、何か近寄り難い雰囲気があって、あまり話をしたことはない。
そういえば、バレンタインに何の気まぐれか俺にもチョコレートくれたっけ。


つづく



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

続きを読む »

虹色マカロン Part3 白雪姫

お待たせしました。「虹色マカロン」の続きです。
しかし、あの・・・。今回蒼祐くんの株が下がりそうな気配が・・・。
うーん、まあその、19歳男子としてはこんなのもありかなとか。
イメージ壊れたらまことに申し訳ないです。批判でも一向に構わないので、コメントいただけるとうれしいです。
いきなり言い訳が入ってすいません、では、以下小説です。



虹色マカロン Part3


「マカロン、好きなの?」
「いや、実は一度も食べたことない。これもプレゼント用だし。あ、そうだ、せっかく会ったから、これ、先月のお返し」
「あら、ありがとう。憶えていてくれたのね」

さっき買ったばかりのクッキーを手渡すと中川さんは微笑んだ。なんというか、妖艶な感じの微笑で、ちょっとどきっとする。

「橘くん、今日はこれから何か予定ある?」
「いや、別に何も・・・」

彼女にデートを断られたことを思い出して、胸がチクリと痛んだ。

「そう・・・じゃあ・・・」

中川さんは俺の顔を覗き込むようにしながら言葉を続ける。

「これから、わたしと付き合わない?」

え・・・

さっきチクッと痛んだ胸が今度はドキドキしてきた。
あ、いや、もちろん「付き合う」は「交際する」って意味じゃなくて、単にヒマ潰しにどっか行かないか、ってことなんだろうけど。
いくらデートを断られたからって、彼女のいる身で別の女の子と二人っきりで遊びに行くのは、ちょっとマズいような気がする。
でも、無下に断るのも勿体ない、じゃなくて、失礼だし。

「うーん、じゃあカラオケとか、ファミレス?これから友達に連絡してみるよ。中川さんが来るって聞いたら、みんな何が何でも来たいって言うだろうし」

ポケットから携帯を出そうとした、その時。

「わたしは橘くんとふたりがいいなあ・・・」

中川さんの発言に一瞬息が止まりそうになった。どう解釈すりゃいいんだ。

戸惑いながら中川さんの顔を見る。
抜けるように白い肌、口紅も塗っていないようなのに血のように赤い唇、そしてオニキスを思わせる、濡れたような漆黒の瞳。まさに非の打ちどころのない美人だ。

“雪にように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い”

そんなフレーズが頭をよぎった。
何だっけ、そう、「白雪姫」だ。雪の上に落ちた自分の血を見て王妃が「欲しい」と願った娘。白と赤と黒、強烈な、だが抗いがたい魅力をもつ組み合わせ。
何だか息苦しい。周りの空気が急に薄くなってしまったような、そんな感じ。頭の芯がクラクラする。
その、魅惑的な赤い唇がさらに信じられない言葉を紡ぎだす。

「ねえ、どこに行きたい?なんならホテルでもいいわよ・・・」

これは・・・夢なんだろうか。
中川碧の漆黒の瞳の中に宿る白日夢。まるで、天国で見る悪夢のようだ。


何か、言わなきゃ。
そう思っても、何も言葉が出てこない。それどころか、全身が金縛りにあったように全く動かない。



つづく


いやほんとすいません。続きにあとがきがあります。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村






続きを読む »

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

虹色マカロン Part4、Part5

今回は2回分掲載します。




Part4 パンドラの匣


どのくらい凍りついていただろうか。

ふいに、中川さんがクスッと笑った。そして、堪えきれなくなったのか肩を震わせて笑い始めた。

「いやだ、冗談よ。そんなに怯えなくても取って食ったりしないから大丈夫・・・」

冗談、そうか、そうだよな、当たり前だ。
思わず、ふうーっと大きく息を吐き出す。それと同時に酸素が体に戻ってくるような感じがして、俺はようやく息苦しさから解放された。
それにしても怯えるって、そんな風に見えてたのか。それはそれでちょっと情けないような気もする。

「冗談キツすぎるよ。中川さんみたいな美人にこんなこと言われたら、男なんてバカだからすぐ本気にするぜ」

からかわれていたとわかって、抗議めいた口調になってしまったけど、正直ほっとした。万が一本気だったりしたら、どう対処したらいいかわからない。

「橘くんもおバカさんなの?」
「男ってみんなそんなもんだろ」
「ふうん、わたしにはずいぶんお利口に見えるけど」

どういう意味だ。どうも女の人の考えることはよくわからない。

「やっぱりやめておくわ、用事を思い出したから。じゃあ、また明日ね」

最後にもう一度、魅力的な微笑みを浮かべると、中川さんは去っていった。
用事を思い出した、か。たぶん、最初から俺と付き合う気なんかなかったんだろう。
どういうつもりなのか知らないけど、いずれにしても俺の手には負えそうにない。

何だかものすごく疲れた。用事は済んだし、もう帰ろう。俺はエスカレーターで一階へ向かった。

胸の奥がざらつくような、嫌な感じがする。でもそれはたぶん中川碧のせいじゃない。
胸の奥底にある、決して開けてはならないパンドラの匣。その厳重な封印が剥がれかかっている、そんな感じ。
気のせいだ、俺は頭を振った。

彼女に会いたい、心の底から思った。
その笑顔で、今の俺の不安を払拭してほしい。このなんともいえない嫌な感じから救ってほしい。
どうして傍にいてくれないんだ。
理不尽だってことはわかっている。彼女には彼女の世界がちゃんとあって、俺の都合のいいように物事が進むなんてことは決してない。
わかっている、けれど。
会いたい・・・。


蒼くんは、中川さんの言っているのとは違う意味でバカですね。


Part5 君の名を呼びたい

その時、ポケットの携帯が鳴った、彼女からだ。
携帯を開く一瞬さえもがもどかしい。

「もしもし!」
“どうしたの、そんなに勢い込んで”

彼女の明るい声に心から救われた気がする。

「あ、いや。今すごく会いたいな、って思ってたところだったから、以心伝心かな、とか」
“うーん、そうかも。あたしもね、今メールするつもりで携帯出したんだけど、なんだか急に橘くんの声が直接聞きたくなったの”

冷えた体に温かい飲み物が染み渡っていくみたいだ。

“今日はごめんね、せっかく誘ってくれたのに”
「いや、いいよ。こっちこそ今まで忙しくて会えなくてごめん。今日は楽しんでおいで」
“うん、ありがとう。あとで写メ送るね。あさっては11時に駅でいい?”
「いいよ、改札で待ってるから」
“じゃあ、また明日”
「うん、じゃあ」

そう言って電話を切る。
ほんとは最後に「愛してる」とか言いたかったけど、どうにも恥ずかしさから勇気が出なかった。
だけど・・・
よかった、声が聞けて。


着信履歴には「美紅」という文字が残る。


彼女のフルネームは、柚木美紅。

サークルの顔合わせの時、連絡用に、という名目でメアド交換した。赤外線受信した名前を見て、「なんて読むの?」って聞いたのが、初めて交わした言葉だった。

「ゆうき みく、です。文学部1年、どうぞよろしく」
にこっと笑った彼女の笑顔の眩しさが今でも忘れられない。
「ええと、たちばな・・そうすけさん、かな?」
「そう。でも俺の名前も読みにくいだろ」
「確かに。あたしなんか、一回もまともに読んでもらえたことないの。自分の名前はきらいじゃないけど、もう少しわかりやすいといいなあって思う。あれ?」
「なに?」
「あたしたちの名前、ちょっと似てない?どっちもファーストネームに色が入ってるし、苗字は柑橘系の果樹」
「柚木美紅、橘蒼祐、ほんとだ。すごい偶然」

これがきっかけになって、俺達は急速に親しくなった。
やたらと読み間違えられることが多くて、いつも自己紹介のときは自分の名前の読みづらさに親を恨んだりもしていたけど、このときばかりは両親に感謝した。

それからしばらくして、フルネームで入っていた彼女の名前をこっそり「美紅」に変えた。
いつか「柚木さん」じゃなくて、「美紅」って呼んでみたい、そう思って。


あれから、もうすぐ1年。

柚木美紅は俺の「知り合い」から「友達」になって、「彼女」になったけど、未だに彼女をファーストネームで呼べてない。
そして、彼女のほうもまだ俺のことを「橘くん」と呼んでいる。
そろそろこの状態をなんとかしたい。
たけど、こういうことって何かきっかけがないと、変えるって難しいんだよなあ。

俺は小さくため息をついた。

名前、呼びたいな・・・。

美紅・・・。



やっと彼女の名前が・・・。
美紅ちゃん、「あか」ですね。蒼くんが「あお」で、中川さんが「みどり」
そう、光の3原色です。
虹は光ですので、この話を構成する3人を3色に当てはめてみました。
もちろん、三角関係という含みもあります。蒼くん気付いてないけど・・・。
美紅ちゃんと中川さんは対比の関係でもありますが、それはまたのちほど・・・。



拍手コメントありがとうございます。続きから返信しております。

にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
続きを読む »

テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学

虹色マカロン Part6 以心電信

短いですが続きを
7回で完結させるのは諦めました。
虹の色は各国で数が違うし、まあいいか、とか。言い訳ですが・・・。


Part6 以心電信


3月13日、土曜日。

待ち合わせは11時なのに、6時から目が覚めてしまった。
カーテンを開ける。早朝ということを考慮しても、どう見ても快晴とは言い難い。そのうち雨が落ちてきそうだ。

(ついてないな・・・)

付き合ってひとつきになるけど、忙しかったから、ちゃんとしたデートは初めてだ。爽やかに晴れることを期待していたのに、この天気じゃ行く場所も限られてしまう。
俺は彼女と一緒に居られれば、どこだって構わないけど、彼女はそうじゃないだろうし。

映画とか、買い物?
メールして聞こうかと思ったけど、時間を考えてやめた。
彼女はまだ眠ってるかもしれない、緊張と興奮でこんな時間から起きてしまったのは俺の方だけだろうし。

そう思っていたら、メールの着信音がした。

“美紅 件名:朝早くからごめん”

慌てて携帯を開く。

“こんな早くからごめん、起こしちゃったかな。なんだか早く目が覚めてしまって
ちゃんとしたデートは初めてだね。お天気はイマイチだけど、あたしは橘くんと一緒ならどしゃぶりでもハッピーだよ
・・・って、ちょっと恥ずかしいな。早朝から変なテンションでごめんね。じゃあ、また後で
起こしちゃったんだったら、まだ時間あるから二度寝してね。遅刻しても怒らないから

思わず微笑みが浮かんでくる。

“俺も早く目が覚めて、メールしようかと思ってたところ。ほんとに以心伝心かもしれないな”

そう打って送信ボタンを押す。さすがに絵文字は恥ずかしいからやめた。


離れていてもきっと気持ちは繋がっている。
ほんとにそうだ・・・。

早く
会いたい・・・。



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

続きを読む »

虹色マカロン Part7 シンデレラ

お待たせしました、続きです。


Part7 シンデレラ


駅に着いたのは10時40分だった。
彼女の姿はまだ見えない。

電車の到着時刻は 42分、48分、53分、57分の4本。
きっとこのどれかに乗っているだろう。俺は改札口の正面で待つことにした。
42分すぎ、改札を出る人々の中から彼女を探す。いない・・・次第に人影はまばらになり、やがて、途絶えた。
いない、か。まだちょっと早いし・・・。

けれど、次の電車にも、その次にも彼女の姿はなかった。

次が11時前最後の電車だ、きっとこれに・・・。目をこらして彼女を探した。だけど、見当たらない。
遅刻かな。早く起きていたから、寝坊ってことはない。天気悪いから出かけるのがいやになったとか。あ、でもさっき、メールでどしゃぶりでもハッピーって・・・まさか何か事故でも。
俺がいろいろと思いを巡らせているとき、

「そこのイケメンのお兄さん、あたしとデートしない?」

突然後ろから声をかけられ、俺は慌てて振り向く。

そこにはにっこりと微笑む彼女がいた。

「え、なんで。いつからそこに」
「15分くらい前かな。ちょっとほかに用事があったから、早目に来てたの」
「声かけてくれればよかったのに」
「すぐ後ろにいるんだし、気付くまで黙っていようかな、って。そしたら全然気付かないんだもの。改札の方ばっかり見て、美人でも物色してたの?」

そう言うと彼女はちょっとふくれて、上目使いで俺を睨んだ。
うわ、かわいい。滅茶苦茶かわいい。

「うん・・・」
「ええー、ひっどーい!」
「で、今やっと見つけたとこ」
「ちょ・・・橘くん」

一瞬泣きそうになった彼女の顔がみるみる赤く染まる。
いやもう、何と言うか、殺人的に可愛い。
それに・・・

「今日の服、すごく可愛い」

大学ではわりとカジュアルな服を着ていることが多くて、それはそれで似合ってるんだけど、今日はふわっとした、ピンク系の小花模様のシフォンワンピースでいつもとは雰囲気が全然違う。羽織っているジャケットも桜貝みたいなやさしいピンク色だ。そして足元はくるぶしまでの白いショートブーツ、シューレースもピンクのリボンで、こんな憂鬱な天気なのに、そこだけ春が来たみたいだ。

「そう、よかった。昨日買ったばかりなの」

それは、俺に見せるため?と、都合よく解釈してみる。

「よく似合ってるよ、お姫様みたいだ」
「うわ、褒めすぎだよ。ホメても何もでないからね」

彼女は照れたように微笑んだ。
柔らかそうな栗色の髪が肩先で揺れる。染めているのではなく、生まれつき色素が薄いらしい。目の色も黒ではなく、コニャックみたいな、綺麗な琥珀色だ。
ほんとにお姫様みたいに可愛い。
喩えるなら、両親に愛されて育った幸福なシンデレラ姫、そんな感じ。
ふと、中川碧の漆黒の瞳と赤い唇のイメージが甦ってきて、俺は思わず頭を振った。

「どうしたの?」
「いや、なんでもない、行こうか」
「うん」

勇気を出して、彼女の右手を取った。絡み合った10本の指、彼女の温かさが伝わってくる。
俺は彼女の手を強く握った。
俺のお姫様は柚木美紅だけだ。




蒼くん、なにも5回も「可愛い」って言わんでもいいと思う。
あ、実際に言ったのは一回か。
中川さんが白雪姫なら、美紅ちゃんはシンデレラ姫かな、と思ったので書いてみました。

虹色マカロン Part8 シェアリング

お待たせしました「虹色マカロン」8話めです。
今回、か・な・り恥ずかしいです、発想が・・・。
まあ、こういうパートも書かないと先へ進めませんので・・・。
では、以下小説です、ちょっといつもより長めです。



Part8 シェアリング



昼近くになっても天気は一向に回復する兆しをみせない。
雨になっても大丈夫なように俺達は駅近くのモールに入った。

「どうする、買い物とか、映画?」

確かこのモールにはシネコンも入っていたはずだ。

「うーん、どうしよう。とりあえず、お昼にしない?ちょっと早いけど、今日早起きしたからおなかすいちゃった」
「いいよ、何食べたい?」
「パスタかな、11時半からランチセットやってるし」

なるほど、女の子はそういう情報に詳しいんだな。
彼女のほうから、どこに行きたいか言ってくれて助かった。
自慢じゃないけど女の子と二人きりで出かけたこととかないから、こっちに振られたら立ち往生するところだった。俺の知ってる店っていったら、ラーメンかハンバーガーが関の山だ、とてもデートに向いているとは思えない。

デートコースとか普通は男のほうが下調べとかしてくるものなんだろうな。こういうことに慣れてないってことをいやってほど実感してしまった・・・。
今日一日、無事に過ごせるんだろうか。
初デートであまりの気の利かなさに愛想付かされて、ジ・エンドなんてシナリオだけは是非避けたい。
頑張ろう・・・って言っても何をどう頑張ったらいいのかわからないけど。


彼女に案内されてやってきたのは、カフェ風のお洒落なイタリアンレストラン。
普段だったらまず入ろうとは思わない類の店だ。男が一人で入ったら侘しいし、男同士だったら気持ち悪い。
ちょうどパスタランチが始まったところらしい。
8種類のパスタから好きなものが選べて、フランスパンとスープ、サラダに飲み物まで付いてお値段は680円。
それこそラーメンかハンバーガー並みのリーズナブルさで、ちょっと驚きだ。
彼女はスパゲティ・カルボナーラとミルクティー、俺はペンネ・アラビアータとコーヒーを選んだ。

「こんなとこ、もっと高いかと思ってた」
「うん、夜は結構高いよ。だからほら」

彼女が店内を見回す。
店に入った直後はまばらだった客が、あっと言う間に増え、今はほぼ満席になっている。

「あ、だから先に食事しようって」
「そうそう、昼過ぎると行列が出来ちゃうからね」

などと話しているうちに、パスタが運ばれてきた。
トマトソースのいい香りがして、かなり本格っぽい。

半分ほど食べたときだったろうか

「ねえ、取替えっこしない?」

え・・・

「トマトソースもおいしそうだなあ、とか、ダメだったらいいけど」
「いや、いいよ・・・」
「わ、ありがと!」

彼女はにっこり笑うと、自分の食べていたカルボナーラの皿と俺のアラビアータの皿を入れ替え、アラビアータを口に運んだ。
さっきまで俺の食べていたものを彼女が食べていると思うと何かすごくドキドキする。

「どうしたの?カルボナーラ嫌いだった?もとに戻す?」

つい、そのことに気を取られて食べるのをすっかり忘れていた。

「あ、いや、別に嫌いじゃない、食べるよ」

言いながら俺はスパゲッティをフォークに巻きつけた。

「ここのカルボナーラ、けっこういけるでしょ。ベーコンじゃなくてパンチェッタ使ってるからソースの味がいいし、ブラックペッパーも挽きたてだから香りがいいし・・・」
「うん、そうだね」

相槌を打って、カルボナーラを口に入れたけど、パンチェッタって何のことか知らないし、何より彼女が口にしたものだと思うと一段とドキドキして、あんまり味がわからなかった。

「よく、やるの?こういうこと」
「え、なにを?」
「取替えっことかさ」

大皿盛りの中華料理とか鍋物ならともかく、一人分の料理を食べている途中で入れ替えるという発想は俺にはまずない。
男だったら断固拒否するし、女の子でも、何かいやだ。
でも、今食べているカルボナーラは全然いやじゃない、というより、ちょっとうれしかったり・・・何考えてるんだ、俺は。
でも、彼女が誰とでも食べ物をシェアリングするのは、やっぱりいやだ。
それが男だったりしたら、ぜひやめてもらいたい、と思ってしまう。
些細なことかもしれないけど、嫉妬深すぎるのかもしれないけど・・・

彼女は顔を上げて俺を見つめ、にこっと笑った。

「ううん、やったことない」
「え、じゃあなんで?」

ほっとした、けど、そうなるとますます彼女の行動が理解できない。

「それは、その・・・橘くんの食べてるものが食べたかったっていうか、ちょっと周りにアピールしたかったていうか、もう、そういうこと聞かないでほしいなあ・・・」

彼女はそう言うと、真っ赤になって氷とレモンの浮かんだ水を一気に飲み干した。
うつむく仕草が可愛くて、思わず抱き締めたくなってしまう。
真剣に実行しようか、と思っていたとき

「あの、すみません、お水ください!」

彼女が右手を上げてウェイターを呼んだ。

水入り・・・

でも、まあ、いいか。

胸の奥がくすぐったくなるような気分。
幸せってこんな気持ちのことをいうんだろうな・・・。

続きを読む »

虹色マカロン Part9 友達と恋人の間

9話です。うーん、なかなか進まない。
わが子ながら、じれったくてイライラしますが、本人たちはそれなりに必死なので、どうかあたたかく見守ってやってください。


虹色マカロン Part9 友達と恋人の間


店を出て、長い通路をふたりで歩く。左手を出すと自然に手を握ってくれるのが嬉しい。
すこしずつ心の距離も近づいてきている、そうだといいけどな。

でも・・・
「友達」だったときよりも、会話が減ってきているような。
何か喋らないと、と考えれば考えるほど緊張して何を話したらいいのかわからなくなってきてしまう。
ちょっと前まで話すことなんか考えなくても、いくらでも会話が続いてあっと言う間に時間が経っていたのに。
そんなことを考えていたら

「ねえ・・・」

彼女が話しかけてきた。

「あたしたちってふだん何話してたっけ?」
「え、ええと・・・。多分、友達のこととか、かな」

なんだか他愛もない話ばかりしていたと思うけど、聞かれると思い出せない。

「うん、そうだよね。で、さっきから何か話そうとずっと思ってるんだけど、何にしようとか考えてるとわからなくなってきて・・・」

それ、今俺の考えていたことだ。

「友達のときは何も考えなくても、いくらでも話していられたのにね」

彼女の言葉に胸が騒いだ。
それは、友達に戻りたいってこと?
なんだかいたたまれない気持ちで、思わず左手に力が入ってしまう。

「橘くん?」
「あ、ごめん、痛かった?」
「ううん・・・」

彼女はかぶりを振った。

「橘くん、あたしといても、つまんないんじゃない?」
「そんなこと・・・」

思ってもみなかった、彼女がそんな不安を抱いていたなんて。

そんなことない、絶対ない。
だけど、そう言葉にしてしまうとなぜか途端に空々しくなってしまう。
どうしたら気持ちがうまく伝わるのか、相手に伝えるってこんなに難しいことだったろうか。

彼女の不安な気持ちを払拭してあげたい、でも。
どうしようもない焦燥感を抱え、彼女の手を握り締めたまま、歩き出す。
なんの当てもないけれど、せめて何か彼女の気が紛れることが見つかれば、そう思っていた。


ふと、通路にずらりと並んだワゴン式の出店が目に留まった。
それは、アクセサリー類を売っている店で、可愛らしいデザインのネックレスや髪留めがたくさん並んでいる。

「ちょっと見てみる?」

声をかけると彼女はにこっと笑って頷いた。笑顔をみるとほっとする。

「あ、これ可愛い」

ワゴンの前に行くと、すぐに彼女が呟いた。

手に取ったのはシルバーのネックレス、サークル状の枠の中にハートシェイプにカットされたピンクの石が揺れている。銀色の枠の中にはひとつだけラインストーンが付いていて、派手すぎないけど可愛らしい。うん、すごく彼女に似合いそうだ。




昨日のアホらしい日記はこれ書きながら書きました。
タイトルはこっちが先です。

今回、一人称の限界をひしひしと感じています。美紅ちゃんの気持ちがなかなか伝わらない・・・。
ひとえに私に力がないせいなんですけど・・・。
でもこれは全編蒼くんの一人称でいくと決めたのでこのまま行きます。
続きに拍手コメントのお返事です。カギつきの方はサイトに伺ってお返事しますね。

続きを読む »

虹色マカロンPart10 薔薇色水晶

10話めです。
まさかこんなに長くなるとは・・・
デートしていちゃついてるだけの話なのに、一万字超えてしまいました。
いつ終るんだ、これ・・・。

そして・・・今回も恥ずかしいです。いつもすみません・・・。




虹色マカロンPart10 薔薇色水晶


「これ、ください」

そう言うと彼女は驚いたように俺の方を見た。

「え、いいよ。そんな、プレゼントしてもらう理由ないし・・・」
「これまで待たせたおわびとか、初デート記念とか、理由なんていくらでもつけられるだろ」
「でも・・・」
「一番の理由は俺がプレゼントしたいから。だから遠慮はなし!それとも他のものがいい?」
「ううん、それがいい・・・」
「じゃ、決まり」

小さな包みを受け取り、手渡すと彼女は満面の笑みを浮かべた。

「どうもありがとう」

彼女の笑顔に、心から安堵した。不安なのは、本当は多分俺のほうなんだ。
やっと手に入れた、俺だけに向けられる笑顔。それが何より嬉しくて、だけど、嬉しければ嬉しいほど、それを失うことが怖くて・・・。

「ちょっと座らない?」

彼女はそう言うと、通路の端に置かれた木製のベンチを指差した。
疲れたのかな、そう思いながら、並んでベンチに腰掛ける。
彼女はさっきのプレゼントの包みを開き、ネックレスを俺に手渡した。
戸惑っていると

「着けてくれる?」

彼女は言いながら、両手で後ろ髪をまとめてかき揚げた。

「・・・」

突然目の前に現れた白いうなじ。首筋から肩にかけてのなめらかなラインの美しさと色っぽさに息を呑んだ。

「どうしたの?」
「いや、着け方がわからなくて」

思わず誤魔化してしまった。
うなじに見惚れて忘れてました、とか、とても言えない。

「あ、そうか、貸して」

彼女は俺の手からネックレスを受け取り、一旦留め金を外してみせた。

「こうやってはずして、着けるときはこう・・・」

もう一度、留め金をつける。なるほど、うなじに見惚れてなくてもわからなかったな。
ほんと物知らずで呆れられたんじゃないだろうか。

「はい、ついたよ」

出来るだけ、うなじを見ないようにしながら、ネックレスを着けた。
気付かれてないよな、多分。

「どうもありがと」

そう言うと彼女は髪を上げていた手を下ろした。栗色の柔らかな髪がふわりと降りてくる。
ほんのちょっとだけ残念、とか。
また、何考えてんだ・・・ 自己嫌悪。

「どう、似合うかな?」

振り向いた彼女の胸でネックレスが揺れる。

「うん、すごく似合う。今日の服ともぴったりだし・・・」
「ありがと。ねえ、これなんていう石か知ってる?」
「いや・・・」

自慢じゃないが、そういうことには全然詳しくない。はっきり言って疎い。

「ローズクォーツ、日本語では紅水晶って言うの。恋愛に効くパワーストーンで、とくに胸につけるといいんだって」
「へえ・・・」
「迷信かもしれないけど、それでも信じたいって思うときってあるよね。これからもずっと一緒にいられますように、って」

なんだか感動してしまった。
こんなときに何か気の利いた台詞でも言えればいいんだけど、やっぱり何を言ったらいいのかわからなくて、俺は彼女の肩を抱き寄せた。
彼女が可愛くて、愛おしくて・・・。
ずっと、こうしていたい。

あ・・・
さっきの答えが見つかった気がする。

「あのさ」
「なに?」
「今、ずっと喋ってないけど、つまらない?退屈してる?」
「ううん」

彼女は慌ててかぶりを振った。

「俺も・・・。今、思ったんだけど、無理に話そうと努力なんかしなくてもいいんじゃないかな。俺は一緒にいられれば、それですごく満ち足りているから」
「うん、あたしも・・・」

彼女の髪を撫でると幸せな思いが満ちてくる。

言葉は、いらない。
それよりも大切な絆が、ここにあるから・・・。



ああ、恥ずかしい・・・。
ローズクォーツって可愛いですよね。「美紅」だから紅水晶にしたこともあります。
月の光に当てるとパワーが増すらしいです、ほんまかいな。
単に紫外線に当ると退色するからだったりして、(赤は紫外線に弱い)ロマンのない奴ですいません。


虹色マカロンPart11 ホームシアター


3日連続更新したい!短くてもいいから、と思っていたのに。
日付変わってしまって間に合わなかったんだぜ(涙
というわけで、短いです。
もう何回で終るかは不明です(やけ!)
でも、確実にラストスパートだと思う、思いたい!!


虹色マカロンPart11 ホームシアター


「これからどうする?映画でも見る?」

彼女に訊いてみた。
本当はもうずっとこうしていてもいいような気分だったけど、さすがにそうもいかない。

「うーん、それもいいけど・・・」
「ほかに行きたいとこある?」
「橘くんのおうちに行っちゃダメかな」
「え・・・」

急に心臓の鼓動が速くなる。

うちに来るってことは、二人きりになるってことで・・・。
さっき見たうなじの白さが鮮やかに甦ってくる。
ついそんなことを考えてしまった俺に彼女が言った。

「お天気本格的に崩れそうだから、多分映画見てるうちに降ってくると思うよ。傘持ってこなかったし・・・。それに橘くんのおうち、確かDVDのプレーヤーあるでしょ。新作じゃなくてもいいならレンタルしてうちの中で見たほうが経済的じゃない?」

・・・。
そういうことか、まあ、そうだろうな・・・。
いろいろと妙な期待をしてしまった。自分の考えていたことが恥ずかしい。

「どうしたの、都合悪い?」
「いや、いいよ」

そう言いながら、見られると都合の悪いものなかったっけ?と必死で思いを巡らせた。うん、大丈夫だ、多分。

「じゃあ、行こうか」
「うん!」

立ち上がると、彼女のほうから手をつないできた。
しっかりとその手を握って歩き出す。
心の距離は近づいている、きっと、確実に。

虹色マカロン Part12 雨音のなかで

12話・・・まだ終らない。
長くてすみません。

虹色マカロン Part12 雨音のなかで


レンタル店を出たところで、ぽつりと雨が落ちてきた。
ここからアパートまで10分、俺はともかく、彼女を濡らすわけにはいかない。

「走るよ、いい?」
「うん」

俺は彼女の手を掴んで走り出した。そういえば、大学に入って以来、走ることなんてなかったな。なんだか、懐かしいような感覚だ。そんなことを思いながら、3つめのコーナーを曲がる。
ようやくアパートが見えてきた。外階段を駆け上る、なんとか間に合いそうだ。

ドアを開けて、転がるように中に駆け込むと、まるでそれが合図のように激しい雨音が聞こえてきた。どうにかセーフかな。少しだけ濡れてしまったけど、なんとかずぶ濡れになる事態だけは避けられた。
彼女の方を見ると、ドアにもたれ、肩で息をしていた。全力疾走したわけではないけど、女の子にはきつかったかもしれない。もう少し考えてあげればよかった。

「ごめん、無理させて。大丈夫?」
「はあ・・・うん。ちょっと休めば。疲れたけど、おかげで濡れずにすんだよ、ありがと・・・。それにしても橘くん、足、速いんだね。こんなに走ったのに全然息乱れてないし・・・」
「ああ、小学校からずっとサッカーやってたから、走ることには慣れてるかな。100メートルは12秒台だから、まあわりと速いほうだとは思う」
「わりと、って。すごいよ、それ」
「そうかな」
「うん」

彼女から尊敬の眼差しで見つめられると照れてしまう。
俺の出た学校はサッカーに関してはかなりの強豪校で12秒台なんかザラだったし、11秒台も結構いたから、さして自分が速いって自覚はなかった。
それにしても、こんなことがポイント高いなんて思ってもみなかったな。

「橘くん、モテたでしょ、中高生のときとか」

は?何でそんな話に?

「運動神経いいし、頭もいいし、かっこいいし・・・」

う、うわ。ものすごく買い被られてる。相当補正が入ってるとしか。

「すごく可愛い彼女がいたんじゃないかな、とか。あ、やだ、あたし何言ってるんだろう」

俯いてしまった彼女の肩にそっと手をかける。何でこんなこと言い出したのかはわからないけど、不安そうな彼女を何とかしたあげたくて。

「あの、ご期待に添えなくて悪いけど、今まで彼女はいなかった」
「うそ・・・」
「いやマジで。俺、中高一貫の男子校出身だし、放課後もずっとボール蹴ってたから女の子と知り合う機会とか皆無」
「そう、だったの・・・」

彼女はほおっとため息をついた。そんなこと気にかけてるなんて予想外だった。
俺にしてみたら彼女のほうがよほどモテそうで、気にしだしたらきりがないんだけど。
先輩と同じ高校ってことは確実に共学だったわけだし。
でも・・・

「変なこと訊いてごめんね」

なんて言われたら、過去がどうのこうのなんて、もうどうでもよくなった。

サークル勧誘の日にビラ配りをしていた彼女に一瞬で目を奪われた去年の春。TVの画面でもグラビア雑誌のページでもない、生身の女の子に見惚れてしまったのは、あれが初めてだった。
それから、長い片思いの時期を経て、今、俺の傍に彼女がいてくれる。それがどれだけ素晴らしいことか。

俺は彼女を抱き寄せた。
俯いている彼女の顔を上げて、そっと唇を重ねる。
レンタル店からここまで走っても、少しも変化しなかった心拍数が一気に上がった。
次第に激しさを増す雨音を聞きながら、甘い唇を味わう。
離したくない・・・。

好きだ・・・。




にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

続きを読む »

すてきないただきもの うぃず 虹色マカロン13

な、なんと!
「日々カナブンは夢現」のtamaさんが「虹色マカロン」のイラストを書いてくださいました!
まずは素敵絵をごらんください。
もう、これだけでもいいかもしれない。

makaron.jpg

いつも通り、tamaさんのブログにお邪魔しましたら、いきなりこの素敵絵が!
マジで腰が抜けそうになりました。
美紅ちゃんと中川さんのイメージがあまりにもぴったりで驚愕しました。いや、私の想像よりかわいいぞ!
美紅ちゃんはまさに「俺のお姫様」ですね。ほっそりと華奢で可愛くて、蒼くんならずとも「守ってあげたい!」という気分になりますよ!
中川さん、美しい。ポーズがよいです。このポーズで誘惑されたら即ついていきますとも!(おい・・)
そして、蒼くん!正直、彼のヴィジュアルイメージってあまりなかったんですよ。小説は常に彼の目線なので、自分の姿は映りません。私も同じ目線になっているので、あまり彼の姿を想像したことがないという・・・。
でも、このイラスト見てほんとにぶっ飛びました。
な、なんてかっこいいんだ!
こんなイケメンだったとは不覚にも全然気付きませんでしたよ、蒼くんごめん。
そりゃこんだけかっこよけりゃ、美紅ちゃんも嫉妬するわな・・・。
tamaさん、本当にありがとうございます。もう何とお礼を申し上げたらよいやら・・・。
感動しております。ああ、この気持ちをうまく伝えられない自分がもどかしい・・・。


で、美麗イラストだけで十分という向きもございましょうが、よかったら小説のほうも読んでやってください。


虹色マカロン Part13 Welcome to My Theater

「きれいにしてるね。あたし、男の人の部屋って、もっと散らかってるのかと思った」

部屋に入るなり、彼女が言った。
男の部屋か・・・“比べる対象ってどのくらいあるのかな”とか、ちょっと思ってしまった。
俺と出会う以前、“もう、しょうがないなあ・・・”なんて言いながら、散らかった彼の部屋を掃除してたりしたんだろうか。ささいな一言に、つい、嫉妬心が頭をもたげる。

いや、よそう。過去はどうでもいい、ってさっき決めたばかりなのに。

「散らかすほどモノ持ってないからさ・・・」

頭の中に浮かんだ光景を振り払い、俺は彼女に答えた。
彼女はああ言ってくれるけど、きれい、というよりは「殺風景」といったほうがふさわしいだろう。

東京のアパートの部屋は、狭い。
決して財政的に豊かとはいえないから、家具も家電も必要最低限のものしか置いていない。
あるものといえば、机と本棚、食事をするための小さな折り畳みテーブル。シングルサイズのベッド、あとはTVとDVDのプレイヤー、ノートパソコンくらいだ。
服はクローゼットにしまえるぶんだけ。それ以上は増やさないことにしている。
件のDVDプレイヤーも自分で買ったものではなく、終電逃すたびに俺の部屋に泊まりにくる先輩が「宿代がわりだ」と言ってタダで譲ってくれたものだ。本当の理由は「ブルーレイのレコーダー買ったからいらなくなった」というものだったけど。
しかし、ブルーレイとは、自宅組は豊かでいいよなあ・・・。

まあ、そんなことはどうでもいい。

それより、彼女をどこに座らせよう。
普段、友達が来たときはベッドをソファがわりにしている。ちょうどベッドの正面にTVを置いているからだ。
だけど・・・。
女の子をベッドに座らせるってのは、どうも・・・。
明らかに下心満載に見えるだろうし、正直、俺も自分の理性に自信が持てない。
結局、テーブルを少しずらし、その前にひとつしかないクッションを置いた。狭いからすぐ後ろがベッドになってしまうけど、背もたれ代わりだと思ってもらおう。

「どうぞ、狭いけど・・・」
「ありがとう」

彼女を座らせ、隣に腰を下ろす。
息遣いが感じられるほどの近距離、ほんとに二人きりなんだな、と思うと、緊張からか興奮からか、また心臓の鼓動が速くなってきた。

「ねえ、何見る?」

彼女の言葉に我に返る。
そうでした、目的はそれだ。雨が降りそうだから映画館じゃなくて自宅で映画を見ること。決してキスするためじゃない、とか、もうしておいて遅いけど。

「任せるよ、どれでも好きなように」
「うーん、じゃあ、これ」
「OK」

ディスクを受け取って、プレイボタンを押す。

「俺のホームシアターへようこそ、って。狭いアパートのブラウン管TVだけどさ」
「あはは・・・」

彼女が快活に笑う。今日はなんとなく沈みがちだったから、笑い声にほっとした。彼女の屈託の原因はわからないけど、くだらない冗談でも笑顔を見せてくれれば、それでいい。
と、
ふわっと甘い香りがした。
彼女が俺の左肩に頭を乗せる。やばっ、また心拍数上がってきた。

「3Dの最新映画よりこっちのほうがいいよ。橘くんとふたりでいられるもの」

え・・・。
これって、かなりいいムードなんじゃ・・・
そう思ったとき

「あ、映画始まったよ」
「あ、うん、うわっ!」

画面に映し出されたものに思わず腰が引けてしまった。

「な、なんでいきなりホラー映画?」
「だって、暗くなってからじゃ見るの怖いんだもん・・・」

・・・。

ついよからぬことを考えてしまった報いなんだろうか、これは。
俺は画面の中の青白い顔の亡霊にむかって毒づいた。

・・・ったく、恨めしいのはこっちだよ。




あわわわ・・・こんな素敵絵をいただいたのに、なに、このギャグ展開は・・・。
もっとロマンチック展開のところで紹介するべきなのに。
tamaさん、まことに申し訳ありません。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン Part14 コーヒーカップ

14話です、まだ終りません。
でも何か愛着わいてきて終るのがさびしくなってきました。
シリーズ化しようかしら・・・。




虹色マカロン Part14 コーヒーカップ


最初は思わず引いてしまったけれど、映画は結構面白かった。
怖い場面になると、彼女がぎゅっとしがみついてくるのが可愛くて、最後のほうには亡霊に感謝したくなったくらいだ。


雨はまだ止まない。
この天気では食事に出る気もしなくて、夕食は宅配ピザ。
ひとりでは食べ切れなくて、こっちに来てからから注文したことがなかった。ふたりでいる、って実感出来る、こういう何気ないことが、ちょっとうれしい。

さすが日本の宅配ピザは優秀で、この雨でも、時間通りにちゃんと届いた。
サービスで烏龍茶がついてきたけど、今日は雨のせいか肌寒い。久しぶりにコーヒー淹れようかな。

「コーヒー飲む?」
「あ、うん。あたし淹れようか?」
「いや、いいよ、次何にするか考えてて」

とは言ったものの・・・
コーヒーカップはひとつしかない。うーん、まあいいか、これで。

「お待たせ」
「ありがとう、えっ?」

彼女が目を丸くする。

「なんで橘くん、湯のみなの?」
「カップひとつしかないんだ、さっき買っておけばよかった、ってあとで思った」
「じゃあ今まで、お客さん来たときとかどうしてたの?」
「男にお茶なんか出さない。下に自販あるから、喉が渇いたら自分でなんとかしてもらう」

どこが面白いのか、俺の答えを聞いて彼女は笑い転げた。

「そんなにおかしいかな?」
「あははは・・・ごめん。でもちょっと安心した」
「なにが?」
「ほんとに彼女いなかったんだ、って思って。先輩から、女気ゼロの部屋だった、って聞いてはいたけど」

先輩かあ、本当を言うとまだちょっと気になる。友達の彼氏って言ってたけど、すごく仲がいいみたいだし。
そういえば、先輩は彼女を「ミクちゃん」って呼んでる。これじゃ、どっちが彼氏なんだかわからないよな。
そうだ、ここは思い切って・・・

「あ、あの、み・・・」
「なに?」

真正面から見つめられると、未だにドキドキする。うまく言葉がでてこない。

「いや、あの、み・・・ミルクないけど大丈夫だった」
「うん、平気。このままで十分おいしいよ」
「そうか、よかった・・・」

何が「よかった」だ、アホか・・・。
たったひとこと「美紅」って呼ぶだけなのに。その一言が限りなく難しい。

はあ・・・
俺ってつくづくヘタレだよなあ・・・。






ヘタレ王子ですみません。
さすがに殴りたくなってきた・・・。ええい、もう、しっかりせんかい!!
どうでもいいことですが、今日(昨日か)コーヒーメーカー買いました。ちょっとその影響が・・・。
私はグルメとは無縁の人間ですが、コーヒーだけはレギュラーじゃないとダメです、なんでかなあ・・・。

虹色マカロン Part15   122minutesの誘惑

15話です。
今回、結構、「急・展・開」かも・・・。


虹色マカロン Part15   122minutesの誘惑


ホラー・コメディ・アクションと、今まで観た映画は3本。
途中で休憩を挟んだこともあって結構時間が経ってしまった。

「ちょっと疲れたね、コーヒーもう一杯淹れる?」
「うん、今度はあたしやるよ」

そう言って彼女はキッチンに向かった。
これが最後の1本か、恋愛映画だな・・・。
何気なくDVDのパッケージを裏返す。
122分か、わりと長めだな。そう思いながら壁に掛かった時計を確認する。
9時50分か、思ったより遅くなってしまったな。

あ・・・

今の時刻は9時50分、映画は122分。これを最後まで観ると終るのは11時52分になる。
終電は12時5分だけど、ここから駅までは15分だから、単純計算しても12時7分。実際はもっと遅くなるだろう、いずれにしても終電には間に合わない。
タクシー?
だけど雨の週末・しかも深夜となればタクシーも簡単にはつかまらないだろう。


心臓が早鐘を打つ。
彼女はまだこのことを知らない。
知らせるべきだ、でないと帰れなくなる。

でも・・・


俺も気付かなかった、ってことにすれば・・・
そう、今、たまたまパッケージを見たから気付いたけど、もし・・・
例えばコーヒーを淹れに行ったのが俺のほうだったら・・・
パッケージを裏返さなかったら・・・
このことに気付くことはなかったんだし・・・


いや、駄目だ、何考えてる。

でも、
だけど・・・

明日は、日曜日。もともと会う約束をしている。

俺は彼女とずっと一緒にいたい。
彼女を
帰したくない

だったら・・・


俺が黙っていればわからない。


それはこの上なく魅力的な誘惑だった


黙っていれば
気付かなかったふりをすれば

どうなる?



パッケージを見つめたまま、俺はずっと動けなかった。



前々回、前回のギャグパートから、一気に緊張感が漂う展開に。
蒼祐の出した結論は、そして美紅は・・・
次回をお楽しみに
・・・なんつって。


前回、終るとさびしい、と書きましたら、いつも読んでくださっている方が「私もさびしいです」と言ってくださいました。
「ぜひシリーズ化してください」とのもったいない励ましのお言葉も。

もう、感激です。
どうもありがとうございます。



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン Part16 匣のなかに潜むもの

16話です。


虹色マカロン Part16 匣のなかに潜むもの



「・・・くん、・・・ばなくん、橘くん!」

彼女の声でようやく我に返る。

「コーヒーはいったよ。どうしたの、怖い顔して・・・」
「あ、いや・・・」

胸の動悸が治まらない。
どうしよう、やっぱり言わないと、でも・・・。
彼女を引き止めておきたい、その誘惑が舌先を凍らせる。

「大丈夫?」

彼女が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「え、なにが?」
「顔、真っ青だよ、具合でも悪いの?」

目と目が合う。
透き通った、琥珀色の瞳。
何ひとつ俺を疑っていない、曇りのない純粋な瞳だった。

綺麗だ、と思った。
だけど、それだけに、かえって胸を抉られるような気がした



俺は、今何を・・・


この瞳の前で、姑息な計算を巡らせて自分の欲望を叶えるつもりだったのか。
最低だ、恥ずかしい・・・


そう思った瞬間、一昨日の出来事が甦ってきた。



あの日、バレンタインのお返しを買いにいって、偶然、同じゼミの中川碧に会った。
中川碧は誰もが認める美人で、大抵の男は彼女に興味を持っている。
でも、俺はあまりタイプじゃないというか、プライドが高そうで取っ付き難くてちょっと苦手だった。
だから中川碧には何の興味も持っていない、そう思っていた。
俺は新入生のサークル勧誘の日に柚木美紅に一目惚れして、彼女のことばかり考えていたし。


でも、

あの時、中川碧の気まぐれでデートに誘われて、ほんのわずか、心が動いた。向こうにしてみればほんの冗談だったのだが、ホテルに行ってもいい、とまで言われて、つい、こう思ってしまった。


皆の憧れの存在である中川碧を抱けるかもしれない
いや、そこまでしなくても彼女と二人で出かけただけでゼミの連中がさぞうらやましがるだろう。

黙っていればわからない、もう子供じゃないんだし
誘いに、乗ってしまおうか

別に中川碧を愛しているわけではない、俺が好きなのは美紅だけだ。
でもやっぱり、心が揺れた。
だけど、そんな自分を認めたくなかった。

あの後に襲ってきたなんともいえないいやな気持ち
その正体は自分の中にある狡さ、卑怯さだ

黙っていればわからない

一瞬でもそう思ってしまった。
自分でも気付かなかった、姑息な考え
パンドラの匣の中身は、これだったんだ



そして、今、
あのときよりも何倍も強い誘惑につい負けそうになった。

俺は美紅を愛している。

だから、どんな卑怯な手を使ってでも引き止めたい、真剣にそう思った。
だけど、
それは決して開けてはならないパンドラの匣だ。
今この誘惑に負けてしまったら、きっと後悔する。
もう、美紅のこの透明な美しい瞳をまっすぐに見つめかえすことができなくなる。


俺は決心した。




蒼くんの決意についてはまた次話で・・・


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン Part17 言わなければならないこと

お待たせしてすみません、ちょっと短めですが続きです。


虹色マカロン Part17 言わなければならないこと



「あの・・・」
「なに?」
「この映画、今日どうしても見たい?」
「どうしても、ってことはないけど。なんでそんなこと訊くの?」

彼女は不思議そうな顔をして尋ねた。
ああ、やっぱり気付いてなかったんだ。

「これを観ていたら2時間以上かかる、もう10時近いから、終電に間に合わない」

言ってしまった・・・。
でも、多分これで良かったんだろう。
策を弄して彼女を引き止めたりしたら、後で自己嫌悪に陥るに決まっている。

彼女は振り返って時計を見、ついで俺の顔をじっと見つめた。なんだか悲しそうな顔だ。
どうして・・・
俺何かまずいこと言ったんだろうか。

「そっか、そうだよね」

彼女はいきなり立ち上がった。そして・・・

「もう帰るね、明日返すから傘貸して」

言うなり踵を返して玄関に向かった。突然の出来事に驚く、なんでそんな急に。

「あまり長居しちゃ迷惑だよね。ごめん、いきなり押しかけて居座っちゃって」

彼女の言葉に衝撃を受けた。

まさか、そんな風にとられるなんて思ってもみなかった。
違う、そうじゃない、そうじゃないんだ。

「ちょっと待って、迷惑なんかじゃない!」
「一人で帰れるから送らなくて大丈夫、またね・・・」

聞く耳は持たない、というように、後ろをむいたまま彼女が言う。

頭の中で警鐘が鳴り響く。
今彼女を帰しちゃいけない。
今、ここで彼女を引き止められなかったら、二度と彼女の心を取り戻せない、そんな気がする。

待ってくれ、まだ・・・



そうだ、俺はまだ何も言ってない。

言わなきゃいけないのは、本当は終電の時間なんかじゃない、言いたかったのは、言わなきゃならないのは・・・。

俺の、本当の気持ち・・・。

「さよなら・・・」

そう言って、玄関で靴を履きかけた彼女の背中に向かって、俺は叫んだ。


「美紅!!」



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村



拍手コメント、メルフォコメントありがとうございます。
続きから返信です。

続きを読む »

虹色マカロン Part18  You Are My Treasure

18話、クライマックス、かな?



虹色マカロン Part18  You Are My Treasure


びくっ、と彼女の肩が震えた。
まだ後ろを向いたままだが、足を止めることは出来た。

「美紅・・・」
「な、に・・・」

声が小さく震えている。

「そのままでいいから、聞いてくれ・・・」

いらえは、ない。だが、とりあえず、出て行くのは思いとどまってくれたようだ。

「ごめん、俺は、卑怯で意気地なしだった。本当の気持ちが言えなかった。いや、言う勇気がなかった・・・。さっきまで終電のことは黙っていようかと思っていたんだ。黙っていれば、自動的に終電の時刻は過ぎてしまう。そしたら、もしかして、明日まで一緒にいてくれるかも、って考えたんだ。だけど、そんなことを考えてしまった自分がいやだった。だから、今、終電に間に合わないことを伝えた。そうすれば自分は卑怯者じゃなくなる、そう思った。だけど、それは間違いだ、って今気付いた」

美紅は振り向かない。だけど、ちゃんと話を聞いてくれているのはわかる。

「そんなことを言うほうがずっと狡くて卑怯だ、俺は自分から逃げていた。終電のことをいえば、帰るか残るかの選択肢は俺の手を離れる。あとは美紅の気持ち次第、万が一でもいい、それでも帰らないって言ってくれないかな、そんな都合のいいシナリオをどこかで思い描いていたと思う。本当は、自分でしなきゃいけない決断を放棄して美紅に甘えようとしていたんだ。俺は本当にどうしようもない奴だ、だけど、美紅が好きだ、心から愛してる、だから・・・」

俺は大きく息を吐き出した。本当に言わなければならないこと、それは

「俺は、美紅を帰したくない。ずっと一緒にいたい・・・帰らないで、俺の傍にいてくれ」

美紅の肩からバッグが滑り落ち、床で乾いた音を立て・・・

そして次の瞬間、
美紅は振り向き、そのまま、真っ直ぐに俺の胸に飛び込んできた。
その華奢な軀をしっかりと抱きとめる。

「美紅、美紅・・・好きだ・・・」

美紅の耳元でその言葉を何度も繰り返す。

もう・・・
それしか言えなかった・・・




ふと、目が覚めた。
先ほどまで響いていた雨音は止んでいる。
夜明けが近いのだろうか、辺りはぼんやりと明るい。

美紅は俺の左肩に頭をのせてぐっすり眠っている。
とても
幸せな重さだと思った。

起こさないように注意しながら、ほっそりとした軀をそっと包み込むように抱き寄せる。
大切にするよ・・・
ずっと、ずっと

美紅・・・

俺の宝物・・・。



ランディング・・・ですね。
やっとここまできました、長かった・・・。
でもこの話はもう少し続きます。



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン Part19  明日にかかる橋

お待たせしました、19話です。
この暑いのに暑苦しい話ですいません・・・
この話の中ではまだ3月なんで許してやってください。ほんと展開遅くて申し訳ない。


虹色マカロン Part19  明日にかかる橋


まぶしい・・・
雨、止んだのか、晴れてるみたいだな。
まぶた越しに感じる光にぼんやりとそんなことを思う。

あ・・・
美紅・・・
あわてて目を開けて隣を見る。

え・・・

誰もいない・・・

もしかしてあれは夢とか、いや、まさかそんな。

「美紅!」

思わず叫んだ。
と・・・

「なに、蒼くん」

キッチンから美紅が顔を覗かせた。
よかった、夢じゃなかった・・・
安堵感に全身の力が抜けるような気がする。
あれ・・・
今、「蒼くん」って。
呼び名、変わってる。
たったそれだけのことだけど、何だかさらに距離が縮まったようで嬉しい。

「おはよう、美紅」
「おはよう、蒼くん、ちょうどコーヒー入ったところなの。着替えてきてね」

確かにキッチンからコーヒーのいい香りがする。
とても幸せな朝、今までの人生で最高の朝だ。

服を着て、顔を洗って・・・
歯を磨こうと洗面台の棚に手を伸ばし、そこに赤いカップに入った携帯用の歯磨きセットを発見して、ものすごくドキドキしてしまった。

Saturday to Sunday・・・
ふたつの日をまたいで一緒に過ごした証。
胸の奥が暖かくなる。
幸せのゲージがさらに上がった。


部屋に戻ると、トーストとコーヒーの朝食が待っていた。
いつもと同じメニューなんだけど、そこに美紅の笑顔があるだけで全然満足度が違う。

「何か作ろうと思って冷蔵庫開けさせてもらったんだけど。中、マヨネーズとバターとウーロン茶くらいしか入ってなくて」
「あ、うん。料理とかしないから。てか、出来ない」

美紅がくすっと笑う。ほんとに可愛い笑顔だなあ・・・

「蒼くんにも出来ないことがあるんだ、ちょっと安心した」
「買い被りすぎだよ、むしろ出来ないことだらけ・・・あ、まだカーテン開けてなかった」

初めての朝、美紅の眼差しがなんだか眩しくて照れくさい。照れ隠しに、俺は窓に向かった。青と白のストライプのカーテンを開け放つと、春の日差しが部屋いっぱいに差し込んでくる。
そしてそこに・・・

「あ・・・」
「わあ・・・」

昨日の雨が嘘のように晴れ渡った青い空に、二本の鮮やかな七色のアーチがかかっていた。

「虹だ・・・」

こんなにもくっきりとした虹を見たのは何年振りだろう。
ため息が出るほど美しい、雨と太陽が造形する自然の芸術。その素晴らしさに思わず息を呑む。

でも・・・

立ち上がって俺の傍に寄りそう美紅を抱き寄せながら、俺は思う。

ほんとうに素晴らしいのは、この美しい光景を共有できる人がそばにいることだ。
心から愛する人が。

「すごくきれいだね」
「うん」

美紅の言葉に頷く。

昨日の雨が残していった贈り物、それは昨日から今日へ、そして未来へかかる橋。

昨日も今日も、そして明日も・・・
ずっとこんな美しい瞬間を分け合っていけたらいい。

そう思いながら、俺は美紅をしっかりと抱きしめ、唇を重ねた。



ええ、もう暑苦しいですね、恥ずかしいですね。まことにあいすいません。
はい、デート当日が雨なのはここにもっていくためです。
初デートなのに、ときどき暗雲立ち込めていたのも・・・。
多分、次回でラストです。



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン Part20 White Day

すいません終りませんでした。あまりお待たせするのもなんなので、とりあえず書いたところまで・・・


虹色マカロン Part20 White Day

「ああ、そういえば・・・」

トーストを食べ終わって、コーヒーを飲んでいると、美紅が話しかけてきた。

「ん、なに?」
「冷蔵庫の中に箱が入ってたけど」

あ、そうだ。忘れるところだった。

「ちょっと待って」

冷蔵庫から取り出した箱を美紅に渡す。

「はい、これ・・・」
「え、なに?」
「今日ホワイトデーだろ、バレンタインのお返し」
「憶えててくれたの?」

意外だったらしく、美紅は目を見開いた。

「もちろん。美紅、バレンタインのとき言ってただろ、ほんとに好きな人には当日渡すって」
「うん、どうもありがとう」

はにかんだように微笑む美紅がたまらなく可愛い。

「開けていい?」
「どうぞ」

白のラッピングペーパーに、ピンクのリボンのかかった六角形の箱、その中には花の形に並んだ、七色のマカロン。美紅が歓声をあげる。

「わあ、きれい。ちょうど七色で、虹みたい・・・」
「ほんとだ。全然意識してなかったけど、確かに七色だ」

空に架かった虹の橋はもう消えてしまったけれど、ここにも虹があった。食べられる、お菓子の虹、美紅が嬉しそうに頷く。

「ええと・・・ヴァニーユ・ピスターシュ・シトロン・カシス・フレーズ・フランボワーズ・ロゼ、どれにしようかな、うーん、迷っちゃう・・」
「なに、それ。何かの呪文?」
「え、やだ。なんの味かってこと」
「読めるの?でもって意味もわかる?」

マカロンの上には透明なシートがのっていて、アルファベットが書いてあるけど、どうみても英語じゃないから全く読めなかった。

「うん・・・フランス文学勉強したいから、フランス語やってるの。原書読めたらいいなあって」
「へえ・・・」

初めて知った。友達だったときからいろんなことを話してきたと思ってきたけど、美紅がどんな勉強をしていて、将来何をしたいかとか、今まで全然知らなかった。

「蒼くんは?教育学部だからやっぱり先生になるの?」
「うん。子供と一緒に走り回りたくて、小学校の教師志望・・・。今のバイトも将来のためかな、教え方の勉強に」
「小学校の先生かあ。うん、すごく似合いそう。あ、そうだ、バイトっていえば、あたしも春休みからバイト始めるの」

バイトか。自宅通学だから生活費とか要らないと思うけど、女の子は服とか化粧品とかいろいろ物入りなんだろうな。
でも、そうなるとますます会える時間が少なくなりそうで、ちょっとさびしい。



あ、あれ、なんで終んないの?
ほんとにすいません、もうあと何回とかは言わないようにします。
続きは、できれば明日に。もう7月だ、なんでこんなことに、しくしく・・・
やっとマカロンが出てきた。7月まで冷蔵庫に入れていたわけではないんですが、ものすごい今更感。
もう、カキ氷の季節ですよね。

虹色マカロン Part21 サプライズ

伸びてもいいですか?いいですよね。ってことで出来たところまで再び^^
ちょっとくじけそうになったのですが、温かい励ましのお言葉をいただき復活いたしました。
あとちょっと・・・ラストまで頑張ります!


虹色マカロン Part21 サプライズ


「どこでバイトするの?」

出来ればコンビニとかファミレスは避けてほしい、コンビニは危険そうだし、ファミレスは誘惑が多そうだし・・・。

「うーん、実はね」

美紅はなぜか言い澱んでいる。まさかキャバクラとか、ダメだ。そういうのは絶対反対。
焦っている俺の気持ちを知ってか知らずか、美紅は気まずそうにこっちを見て言った。

「英光ゼミナールなの」
「え、あの、それ・・・」

俺のバイト先・・・。

「相談もせずにごめんね。だって先月から蒼くんずっと忙しくて、サークルにも顔出さなくなってすごくさびしかったの。そしたら構内の掲示板で春休みの補習のヘルパー募集してたから、つい。でも、バイト先でまで一緒だとうっとうしいかなあ、って思って言いづらかったの。やっぱ、いや?」

びっくりした。でも・・・

「いやなはずないだろ。バイト終ったあとも送っていけるし、最高」
「よかったあ・・・」

美紅はほおっと大きく息をつくと、安心したように微笑んだ。

「実は昨日、面接だったの。教育学部のほうが偏差値高いから不安だったけど、なんとかパスしてほっとした。でも事前に相談せずに決めたから蒼くんに早く言わなくちゃって思いながら、きっかけが掴めなくて」

ああ、それで昨日待ち合わせより早く来ていたのか。

「思いがけずうれしいサプライズだったな。それなら春休みもずっと会える」
「うん!」
「ところで、どれ食べるか決めた?」
「あ、そうだった。フランボワーズにしよう」

そう言って美紅は赤いマカロンをつまんで一口齧った。

「おいしい!」

女の子って、お菓子食べるときほんとに幸せそうな顔するよなあ・・・。その顔を見ていたら、ちょっと悪戯心が湧いた。

「フランボワーズってどんな味?」
「あ、半分食べる?食べかけだけど」
「いや・・・」

俺は身を乗り出して、美紅の唇にキスした。甘酸っぱい味がする。

「ふうん、フランボワーズってラズベリーのことか」
「蒼くん!そういう味見の仕方やめて!」

ぱあっと頬を染めて抗議する。そういう反応がまた可愛いから、ついからかいたくなるんだけど。

「でも、ほんとに嬉しい。あたし、ちょっと不安だったの。バレンタインのとき、蒼くん、あたしのこと好きって言ってくれたけど、それからずっと会えなかったから。忙しいのはわかる、でも、もしかして避けられてるんじゃないのかな、って」

胸が締め付けられるような気がした。このひと月、自分の忙しさにかまけて悪いと思いながらも美紅のことを放っておいてしまった。それがこんなにも美紅を不安にさせていたなんて。




美紅ちゃんのブルーの理由、その1。
その2は、また次のお話で。
相手の気持ちって見えるわけではないので、ちゃんと意思表示しないと。
電話で恥ずかしがらずに「愛してる」って言っておけばよかったんですけどね。



にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村

虹色マカロン 最終話 いつも、どんなときも

ついに、最終回です。ちょっとさびしい。
応援してくださったかた、ありがとうございます。


虹色マカロン 最終話 いつも、どんなときも


「ごめん、俺、美紅の気持ち考える余裕がなくて」
「ううん、ほんとに大変だったんだもんね。でも、昨日と今日でやっとちょっと自信がもてた。蒼くんもあたしのこと好きでいてくれたんだって」

そういえば、バレンタインの告白以降、「好き」って言っていなかった。
そのうえ、ひと月近くもろくに会ってないなんて、普通なら愛想つかされても仕方がない。俺、彼氏失格だな・・・。

「俺は初めて会ったときから美紅が好きだったよ。一目惚れ」
「ホントに?じゃあ、あたしと一緒だね」

え・・・?

「マジで?美紅も初めから俺のこと・・・」

信じられない。ずっと片思いだと思っていたのに。

「すごく心配だったんだから。教育学部って女子多いし、蒼くんはかっこいいから取られたらどうしようって」

いや、それは取り越し苦労っていうか、心配無用だけど。
俺達、最初から両思いだったのか。
なんかもう、叫びたくなるくらいうれしい。

「ところで今日、これからどうするの?」

美紅の質問に俺はちょっと考えた。

「そうだな、とりあえず・・・。これからペアのカップ買いに行くってのは?」
「あ、それいいな、賛成!」

笑い声が重なる。
幸福なひととき、これから幾度もこんな幸せな朝をふたりで迎えられるといい、そう、心から思った。






夕刻。
俺はいつもより少し早めに駅まで美紅を送ってきていた。
本当はもっと一緒にいたかったけど、昨日急に泊まらせてしまったから、あまり遅くなると家の人が心配するだろう。
それに・・・。
たとえ一緒にいなくても、俺達の心は繋がっている、そう信じられるから。

「じゃあ、またあした・・・」
「あ、美紅。ちょっと待って」

改札の向こうで、笑顔で手を振る美紅を呼び止める。

「え?なに、蒼く・・・」

俺は美紅の肩を掴んで引き寄せるとその唇に軽くくちづけた。
駅の構内にいる人たちの視線が一斉にこっちに集まったのを感じる。
だけど、もう少しも恥ずかしいとは思わなかった。

俺は美紅を愛している、この気持ちのどこにも微塵も恥じるところなんてない。

「おやすみ・・・」

美紅の耳元で囁く。
美紅はびっくりしたように俺を見て、小さく「おやすみ」と呟くと、ホームへと歩き出した。
が、
2、3歩歩いたところで、彼女は体ごとこちらを振り返った。
そして口元に両手を添えると

「蒼くん、大好き!」

と叫び、つぎの瞬間、踵を返してホームの階段を駆け上った。

だ、大胆。
周りの視線がまた一斉にこっちに集まったのを感じる。
さすがに少し気恥ずかしいけど、でも、美紅が俺にはっきり「好き」って言ってくれたのは初めてのことで、すごくうれしい。
やっと、本当に気持ちが通じ合えた。そんな気がする。


周りの好奇の視線に晒されながら、俺は駅を出た。
3月の夜風はまだ冷たいけれど、一月前のように寒くはなかった。
それは、心の中が温かいからかもしれない。

この数日間、本当にいろんなことがあった。
嬉しかったり、驚いたり、慌てたり。
とても忙しかったけど、そんないろんな思いを経験する中で、俺達の絆はとても強くなった、と思う。

今、俺の左側に美紅はいない。
でも、たとえ傍にいなくても、俺の心の中にはいつも美紅が寄り添っている。
楽しいときも、辛いときも、
どんなときでも・・・。

俺は歩き出した。
美紅の心とともに・・・。



                               END





やっと、終りました。感無量です。

始まってから約4ヶ月。
当初はこんなに長くなるなどとは思ってもみませんでした。
蒼祐と美紅は思いがけずたくさんの方に愛していただき、感謝にたえません。
みなさんの温かい励ましに支えられたおかげで、ふたりの不器用でもどかしい恋は幸せなゴールにたどり着きました。本当にありがとうございます。

このお話は、恋物語であると同時に、主人公の成長物語でもあります。
1話と最終話で主人公の心が変化し、確かな成長が感じられる、そんな話にしたかったのです。
もし、お時間が許しましたら1話を読み返してみてください。その答えが最終話ということですね。

そんなこんなで全体の流れは最初から決まっていたので、すぐ終るだろうと高を括っていましたら、えらいことになりました。
外の動きが激しいストーリーと違い、これといった事件が起きるわけではないのですが、心の動きをていねいに書こうとすると思いのほか、時間と字数がかかるものですね。
かなり苦労した部分もありますが、その部分も含めて「虹色マカロン」は私にとって忘れられない作品になりました。

さて、このお話は今回で終わりですが、二人の恋は終ったわけではありません。むしろ、まだまだこれから、です。
蒼祐と美紅は今後もたびたび登場することと思います。
実はそのための布石もこっそり打ってあります。それが生きるのはいつになるかわかりませんが。

これからの予定は、まだはっきりとは決めてないです。
マカロンのサイドストーリー的なものをやるか、全く新しいものに取り組むか。
ちょっと考えます。
たまに蒼ミク観戦記みたいな、おバカな小話も書くかもしれません。
オチで笑わす話好きなんですよ、大阪在住のせいかしら。


今まで応援ありがとうございました。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ
にほんブログ村