ゆめいろ・バウム Part1 Birthday Plan

9999のゾロ目を踏んでくれた、れいちゃんのリクエストです。
「秋色スイーツのお話」ということで、スイーツといえば蒼ミク、ってことで、久々にふたり揃って登場です。



Part1 Birthday Plan


9月6日、月曜日。
今日バイトは休み、まだ学校も二学期が始まったばかりで比較的のんびりしている。かえって夏休みのほうが受験対策の補習が多くて忙しかったくらいだ。
大学の休みは10日までだから、俺にとっては心ゆくまで夏休みを満喫できる貴重な時間だ。

とくに、今日は一生に一度きりの特別な日。なんの日かって?
今日、9月6日は俺にとって世界で一番大切なひとの十代最後の日。日付が変わって7日には美紅は20歳になる。
美紅が、はたちになる瞬間、そのときをふたりで迎えたい。
先月のなかばにそう言ったときの美紅のうれしそうな表情は忘れられない。

そして、今日。
街に出てふたりで買い物を済ませ、軽めの夕食をとってから、アパートへ向かう。

「本当に俺のとこでいい?やっぱりホテルとるとか、もっと小ぎれいな場所のほうが」
「ううん、いいの。ホテルは家じゃないでしょ。蒼くんのところのほうが落ち着くもん。」
「うん・・・」

それは美紅にとっても家ってことなのかな。なんて思ってみたり。
いつも同じところにふたりで帰れたら、それが一番なんだけど、なかなかそうはいかない。でも、今のところはそう思ってくれるだけで幸せな気分になれる。

電車を降り改札を出たところで、美紅の手を握る。
そういえば、半年前初めて手をつないだのもここだった。それだけでもものすごく勇気がいったよな・・・。
そんなことを思いながら、歩き出した。
そのとき

「あ、先生だ!」

後ろから声が聞こえた。
せんせい?まさか・・・。
振り返るとリュックを背負った子供が3人、男の子がふたり、女の子がひとり。
塾で俺が教えている小学生だった。
ちょうどもうすぐ塾の始まる時間だ。俺と美紅は休みだけど、塾自体は休みじゃないことをすっかり忘れていた。
やばい、さっと美紅が手を離したけど、たぶんしっかり見られていたような。
男の子のひとり、トモキくんが話しかけてきた。

「橘先生と柚木先生、付き合ってるの?」

ほら来た、なんて言えばいいんだ。別に隠すことでもないけどやっぱり言いにくい。
美紅も恥ずかしいのかうつむいたままだ。

「ねえねえ、どうなの、ケッコンするの?」

もうひとりの男の子、シュウトくんも興味津々といった感じで聞いてくる。
どうしよう、と思っていると。

「あんたたち、からかうのやめなさいよ、今は先生達プライベートタイムなんだから、そっとしておいてあげなくちゃ」

最後のひとり、アヤカちゃんが助け舟を出してくれた。ありがたいけど「プライベートタイム」とか「そっとしておいてあげる」とか、最近の子供の言うことはすごい。

「ほら、行きましょ。チコクすると塾長から家に連絡が行くんだから急がないと、じゃあね、先生」

まだ何か聞きたそうにしている男の子二人を引っ立てるようにして、アヤカちゃんは歩きだした。

「あ、うん。じゃあまた明日」

ほっとして3人に手を振ると、アヤカちゃんが振り向き、

「でもちょっとショックだなあ、あたし、大きくなったら橘先生のおヨメさんになってあげてもいいと思ってたのに。でも、柚木先生のことも好きだからまあいいか。」

そう言うとにっこり笑ってウインクしてみせた。アヤカちゃん、きみはまだ10歳だろう。

「それとこのことは塾長には内緒にしておいてあげるね。こいつらにも言い聞かせておくから」
「あ、うん、ありがとう・・・」

アヤカちゃんは最後に気配りまで見せて手を振りながら去っていった。何と言うか、女はこわい。




やっぱりちょっと情けない蒼くん・・・。
こんなことで大丈夫かなw
「ゆめいろ・バウム」はもちろん小説の内容にかかってきますが、実家の近くに「夢の木」というお菓子屋さんがありまして、れいちゃんがよく行かれるそうなので。
わたしはシュークリームが好きです(私信w)
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ゆめいろ・バウム Part2  温度差


 Part2  温度差


誕生日計画は、波乱の幕開け。前途多難?い、いや大丈夫だ。今のはちょっと油断していただけで。
知った顔がいないのを確かめてから再び美紅の手を取る。

「恥ずかしかったね・・・」
「ごめん、うかつだった。ちょっと浮かれていたかな」
「明日、アヤカちゃんたちに会うの、もっと恥ずかしいな」

うん、それは確かに。
何か弱みを握られた感じがしないでもない。

「それにしても、蒼くん、モテるね、小学生にまで」
「え?」
「アヤカちゃんって可愛いし、将来すごく美人になりそうじゃない。今から予約入れとく?」
「な、何言ってるの?!俺そんな趣味ないし、それに結婚は・・・」

言いかけて、言葉に詰まる。
ここで「結婚は美紅としたい」なんて言ってしまうのはあんまりだ。
本音だけど、確実に本気にしてもらえなさそうだし、かえって印象下げそうな気もするし。

「やだ、冗談だってば。それに確かに結婚を考えるのは早すぎるよね。蒼くん、まだはたちだし、ゆっくり考えないとね」

結婚はまだ早い、か。
卒業までまだ2年以上あるし、卒業しても結婚するためにはある程度の蓄えがないと駄目だろうし。
でも
正直、美紅にそう言われてしまうとショックだったりして。

俺は美紅以外の女の子を好きになるなんて考えられないし、美紅にもそうあってほしい。
美紅を他の男に取られるなんて絶対いやだ。ずっと俺だけを見ていてほしい、一生一緒にいたい。

だから・・・。
出来れば今から予約入れておきたい。アヤカちゃんじゃなくて美紅に。

でも、
こういうこと言うってことは、美紅のほうはまだ結婚なんてまったく考えてないってことなんだろうな。
やりたいことがたくさんあって、結婚を考えるどころじゃないってことなのかな。
なんというか、美紅の気持ちと俺の気持ち、そこにずいぶんと温度差を感じてしまう。

「行こうか」

美紅を促して歩き出す。
繋いだ手に力を込めて。
この思いが美紅に伝わるように。
温度差が少しでも縮まるように。
祈りを込めて。



ちょっとせつない展開。
蒼くんの切なる願いは美紅ちゃんに通じるのでしょうか。以下次回(^^)

ゆめいろ・バウム Part3  At home

Part3 At Home


アパートの階段を二人で上がる。
もう何回めかな。3月に初めてデートしてから、わりと頻繁にここに来てくれるようになった。
美紅の部屋よりずっと狭くて窮屈なのに、不平不満なんかひとことも言わない。
俺には過ぎた彼女だよな、と、つくづく思う。

部屋の前で鍵を開けようとポケットを探る、あ、反対側だ。
持っていた荷物を左手に持ち替えようとすると、

「鍵、開けるね」

右手が空いている美紅がバックから鍵を出して開けてくれた。

「サンキュ!」

美紅がにこっと笑う。すっごい幸せ。
うん、ここは俺達の家だよな、とか思ったりして。
激狭で、安普請で、不満を言えばきりがないけど、美紅が一緒にいてくれるだけで、どんな豪邸より素晴らしいと思える。
いつも一緒にいたい。
どこへも帰したくない。
その思いが募って、ドアを開けて部屋に入るなり美紅を抱きしめてしまった。

「どうしたの?」

美紅の問いに、何と答えていいかわからなくて、抱きしめた腕の力を強くする。
幸せと比例して上がってゆくせつなさ。
ずっとずっと、この腕の中に美紅を閉じ込めておけたらいいのに。
その気持ちに気付いてくれたのかどうか。
美紅の両腕が俺の背中に回された。
「どこへも行かない」
そう言ってくれているようで、安堵感が満ちてくる。

「ねえ、蒼くん・・・」
「なに?」
「ここは蒼くんの家だけど、あたしもここに帰るって言っていい?」
「みく?」
「わ、何かあつかましいかな、ごめん、今の忘れ・・・」

残念でした、今の言葉は絶対忘れない。
そう思ったから、美紅の台詞を途中で奪うように、強引にキスした。

「ここは、俺達の家だから」
「うん・・・」
「じゃあ、さ。家に帰ってきたらなんて言うんだっけ」

顔を見合わせて微笑む。

「ただいま!」

声を揃えて言う、そして

「おかえり!」

もう一度、声を揃える。
ちょっと胸の奥がくすぐったくなるような気分。

心の中が見えたらいいのに。そう思うことはしょっちゅうある。
でも、見えないからこそ、それが垣間見えたときの喜びは大きいのかもしれない。

もしかしたら、俺が時々不安になるのと同じように美紅のほうも不安だったりするのかな。
だったら、心の中をすべて見せて安心させてあげたい。
2人分の靴を揃えてくれる美紅の横顔を見ながら強くそう思った。

「さっきはゴメンね、蒼くん」

え?ごめんって?

「あの、何が?全然心当たりがないんだけど」
「アヤカちゃんのこと。あたしってバカだよね、小学生に本気で嫉妬するなんて。蒼くんは小学校の先生になるんだから、子供に人気あることを喜ばなきゃいけないのに」
「え、あ、さっきの?あれ、からかわれただけだろ。10歳の子供にいいようにあしらわれて情けないな、俺」

美紅はどういうわけかくすっと笑った。

「蒼くんったら。でもそういうところが好き」
「あ、どうも。って、え、何が?」
「だからそういうところ・・・」

さっぱりわからない。
美紅といい、アヤカちゃんといい、女の子って謎だらけだ。
でも、まあいいか。
美紅に「好き」って言ってもらえただけで嬉しいなんて我ながら単純だとは思うけど、美紅も嬉しそうだし。

「じゃあ、ホームパーティ始める?」
「うん!」

At home・・・

そう、ここは俺達の家。





どうでもいいようなパートなんですが、実はここすごく苦しかったです。
書いては消し、書いては消し、の繰り返し。ある意味、どうってことないパートのほうが、クライマックス書くよりずっとむずかしいです。
美紅ちゃんの嫉妬に全然気付かない蒼くん。
らしいですよね。

ゆめいろ・バウム Part4 距離感


ゆめいろ・バウム Part4 距離感

パーティといっても特別なことをするわけじゃない。
いつも通りに美紅がメインになって料理をやって、俺はそのアシスタント。
なにせ男子校だったし、寮だったし、サッカーが忙しくて自分の時間とか皆無に等しかったし。
今までそういう環境で育ってきたせいで、この歳まで、ほとんど家庭科というものをやったことがなかったから、最初は、それは悲惨だったけど、美紅が辛抱強く教えてくれたおかげで大分マシになった。
少しずつ、調理器具とか食器も増えてきて「家」らしくなってきた感じ。

もう少し二人でいるときに快適に過ごせる場所に引越したいな、と真剣に思う。
でも、とてもそんな余裕はない。
美紅はそれでも楽しそうだけど、不満があっても我慢してるんじゃないだろうか。

「美紅・・・」

ピザ生地を捏ねている美紅に話しかける。

「なに?」
「こんな狭いところで、窮屈じゃない?」
「うーん、ちょっと調理台は狭いかな。でもまな板シンクに渡したら十分作業できるし、平気」
「いや、キッチンだけじゃなくて、全体的に」

美紅は俺を見上げた。楽しそうな表情、無理しているようには見えない、けど。

「距離が近くていいよね」
「え?」
「あたし、小さいときとかすごく淋しかった。家広いし、お父さんもお母さんも忙しくてあまり家にいなかったから。おねえちゃんもね、どんどんレッスンが忙しくなって相手してくれなくなっちゃって」

医師の父、弁護士の母、ピアニストの姉。
単純に華やかで裕福で羨ましいとしか思ってなかった。自分と引き比べて落ち込んだこともあった。
だけど、よく考えてみれば、美紅の家族の仕事はどれも定刻に家に帰ってこられるような種類のものではない。
あんな広い家で小さな女の子が一人きりだなんて、どれだけ心細かっただろう。そして、今までそんなことに全然気付かずに、美紅の環境を羨んでいた自分はどれだけ矮小な人間だったんだろう。ほんとに恥ずかしい。

「ここにいるとね、どこからでも蒼くんが見えるのがい・・」

愛しくてせつなくて、たまらなくなって美紅を後ろから抱きしめた。
いつでもそばにいるから
どこへもいかないから
それで美紅が安心していられるなら、心細さに泣くことがないのなら。

「ありがと・・・」

美紅の頬から涙がひとつぶ零れた。

「生地、寝かせておかなきゃ。蒼くん、そこのラップ取って」

振り向いた美紅はもうとびきりの笑顔だった。
雨上がりの太陽みたいで眩しい。

これからもずっと美紅が笑顔でいられるように。
もう二度と泣かなくてすむように。

そのために出来ることがあるなら、何でもする。
心からそう思った。





お嬢様、美紅ちゃんはとても孤独な子供でした、という話。
朱里さんのように突出した才能があったわけでもなく、蒼くんのように打ち込むものもなかった美紅ちゃんはかなり辛かったと思われます。みんなに愛されてはいるんですけどね。
そりゃコンプレックスも感じるでしょうね。

ゆめいろ・バウム Part5 Son-in-law


Part5 Son-in-law

食べ物が焼けるにおいは、人を幸せにする、と思う。
クラストとトマトソース、モツァレラチーズが交じり合った香ばしいかおり。

「そろそろ焼けたかな」

言いながら美紅がオーブンを開ける。
部屋いっぱいにマルゲリータ・ピザの香りが広がった。
仕上げにバジルをのせて出来上がり。

「すごい、ピザって家でできるんだ」

思わず感嘆の声を上げてしまう。ピザって宅配してもらうものだとばかり思っていた。それがこんな狭いキッチンでできるなんて。

「ソースは市販品だから手抜きだけどね、凝りだしたらきりがないから」

と、美紅は謙遜するけど、素晴らしいできばえだと思う。
なにより正真正銘、手作りの焼きたてだ、感動してしまう。

「お母さんの好物だから、ピザはよく作るの。蒼くんも好きでよかった」

美紅がつくってくれるのならピザに限らずなんだって喜んで食べる、好き嫌いはないけど、嫌いなものがあっても美紅の笑顔があれば食べられそうな気がする。

・・・そういえば、美紅のお母さんは料理しないんだっけ。
料理って母親に教えてもらうものだと思っていた。まあ、教えてもらったことないけど。俺の場合12から家を出て寮生活だったから、教わる暇もなかった、ということはある。

「うちの母だったら、ものすごく喜びそうだな」
「蒼くんのお母さんも料理しないの?」
「いや、ふつうに毎日飯は作ってたけど、しょっちゅう他人がつくったもの食べたいって言ってたし、娘がほしいとも常々言ってるから。うち男しかいないし」
「うーん、そういえばうちは女ばかりだからお母さんは息子ほしいっていつも言ってる。ほら、七夕のとき、すごく嬉しそうだったでしょ」
「そういや、確かそんなことを」

“娘もいいけど、私、息子が欲しかったの。イケメンの息子が二人も出来て嬉しいわ”

思い出した。
あの時は緊張していて深く考えなかったけど、真矢さんは朱里さんの婚約者なんだし、その真矢さんと同列ってことはつまり、俺を美紅の結婚相手って考えているということ?
わ、何かドキドキしてきた。

「蒼くん?」

美紅の言葉で我に返った。
俺の顔を見上げる美紅は不思議そうな顔をしている。俺が今何を考えていたかとか、当然まったくわかってないよな。

そうでした・・・。
美紅のお母さんがどう思っていようと、美紅本人にその気がなくてはどうしようもない。
一瞬、ムダな期待をしてしまった。

道は、遠い・・・。

渡されたピザカッターで、マルゲリータ・ピザを切り分けながら、俺は内心でため息をついていた。





蒼くんの夢はまだはるかかなた・・・とか?
美紅ちゃんもけっこう鈍感ですね、似た者同士ww
ゆかりさん(蒼くんの母)は確かに美紅ちゃんと一緒に料理つくったりしたら喜びそうです。息子は中1で家出てしまったしね。そういう日が来るといいね、蒼くん

ゆめいろ・バウム Part6 二人分

Part6 二人分


パーティのメニューは、スモークサーモンのマリネに、シュリンプカクテル、アボカドとクリームチーズ、グラハムクラッカー、シーザーサラダ、それにピッツァ・マルゲリータ。

美紅と付き合うまで、コンビニ弁当を温めることと、トーストを焼くくらいのことしかしてなかった極小キッチンで、これだけのものが出来ることに驚いてしまう。

「すごい、テーブルに載りきらない」
「うん、そうだね、だからこれもってきた」

美紅はそういいながら、バックから新品のレジャーシートを取り出して、カーペットの上に敷いた。

「何かパーティっていうよりピクニックみたいだけど」
「いや、こういうのも楽しいよ。しかし、やっぱりテーブル狭いな、でも大きいテーブルだと身動き取れなくなりそう」
「あたしはこれでいいよ。シートは置いていくから、載りきらないときは使えばいいし、普段は大皿盛りしないしね、2人分の食器なら十分でしょ」

2人分の食器。偶然だろうけど、今日はつい結婚をイメージしてしまうキーワードが多いなあ。いちいち反応してしまう俺が意識しすぎなのか。

「じゃあ、とりあえず、乾杯する?まだ日付変わってないけど、前夜祭ってことで」
「うん、ありがと。あ、蒼くんはビールとかのほうがいいのかな」
「いや、ジュースでいいよ。それこの前友達が来たときに置いていったやつだし、美紅が飲めるようになってからでいい」
「そう、じゃあ・・・」
「あ、待って」

美紅がジュースを注ごうとするのを慌てて止める。

「今日は美紅が先、だろ?」
「そっか、忘れてた」

肩をすくめる仕草も可愛いなあ、と思いながらグラスにオレンジジュースを注ぐ。
グラスを合わせて、一口飲んだらパーティの始まり。
やっぱり最初はピザ、冷めないうちに食べたい。
噛むとサクッといい音がした。そして、トマトソースとバジルの香り、チーズの旨味が広がる。

「うまい、絶品・・・」

お世辞じゃなく心からそう思った。

「うふ、ありがと。あたし、何のとりえもないから、料理くらい頑張らないとね」

美紅の笑顔に胸が締め付けられた。
なんでそんなふうに思うんだろう。よほど辛いことがあったのかな、誰が見たって可愛いし、性格もいいのに。
でも、そんなことじゃなく、俺にとって美紅はこの世で唯一の特別な存在で、なにものにも代えがたくて。
うまく言えない。けど、この思いが伝わるといい。
その手段を思いつけない自分がもどかしくて情けない。

「こんなうまいピザが毎日食べられたらいいな・・・」

何かもっと気の利いたこと言えないのか、と思いつつ、内心の願望も交えてそう言ってみる。

「そう?そんなに気に入ってくれたなら、毎日作りにきてもいいけど。でもやっぱり毎日だと飽きない?和食も食べたいし」

・・・通じませんでした、神様。
思わず天を仰ぎたくなったけど、でも、美紅が元気になったから良しとしよう。
でも・・・
やっぱりわかってほしかったな・・・




なかなか通じません・・・
どうしましょうねww

ゆめいろ・バウム Part7 Step by step・・・

Part7 Step by step・・・


楽しい時間は過ぎるのが早い。
気付くと、すっかり夜は更けて、日付が変わるまであとわずかになっていた。

19歳の美紅と20歳の美紅。
この数分で何が変わるというわけではないけれど、やっぱり法律的に大人になるというのは感慨深いものがあるし、その瞬間に立ち会えるのが俺であるということが何よりうれしい。

この日のために買っておいたスパークリングワインを冷蔵庫から出してくる。
日付が変わる瞬間に栓を開けるつもり。
TVを消して、息をつめて二人で時計を見つめる。
秒針が10の数字を過ぎ・・・

「5・4・3・2・1・・・」

勢いのよい音とともにワインの栓が飛んでいった。

「20歳おめでとう、美紅」
「うん、ありがとう・・・」

美紅はうっすらと涙ぐんでいるようだった。
その顔を見ていると、こっちも感動して涙が出そうになってくる。
いくらなんでもそれは恥ずかしいから、笑顔を作ってグラスにワインを注ぐ。

実はワインなんて買うの初めてで、どれにしたらいいかわからなかったけど、色がかわいいかな、という理由でロゼにしてみた。
淡いピンクのワインが泡立ちながら細長いグラスに注がれていく。
ふたつのグラスにワインを注ぎ終わり、目の高さまでグラスを上げると泡の向こうに美紅の姿が見えた。
ずっと、こんなふうに目の前にいてほしい、その思いが満ちてくる。

初めて口にした炭酸入りのワインは思ったより甘かった。でも、舌に残る刺激はやっぱりソーダとは違う。

「どう、おいしい?」

なんだか神妙な顔をしている美紅に聞いてみた。

「うーん、実はよくわからない、すっぱいのはわかるけど」

まあ、そんなものなのかもしれない。
実は俺もビールの味とかよくわからないし、似た者同士なのかもな。
もう少し大人になればわかるのかもしれない、俺達はまだその入り口にたどり着いたばかりだ。

「無理して飲まなくてもいいよ、アルコールは初めてなんだから、気分が悪くなったら大変だし」

少なくとも、美紅を酔わせて何かしようとか、そういうことは断じて考えてないし、美紅に何かあったら大変だ。

「うん・・・」

美紅はほっとしたようにグラスを置いた。きっと本当は苦手だと思ったけど俺に遠慮してたんだろう。

いいよ、それで。
20歳になったからって一足飛びに大人にならなくたっていい。俺だってまだ全然大人じゃないし、これから一緒に成長していけたら、それでいい。

step by step・・・

一歩ずつ、二人で歩いてゆきたい。

オレンジジュースを飲み干す美紅を見ながら俺はそんなことを考えていた。



そろそろ(やっと?)クライマックスが近いかな。
展開遅くてすみませんです。

ゆめいろ・バウム Part8 菩提樹

Part8 菩提樹


「ねえ、ケーキ食べていいかな?」

小首をかしげて、美紅が聞いてきた。

「いいも何も、今日は美紅の誕生日なんだから」
「うん、じゃあ・・・」

言いながら美紅がケーキの箱をあける。
現れたケーキは俺にとっては意外なものだった。

「バウムクーヘン?」
「うん」

木の年輪のような、ドーナツ型のお菓子。
俺でも名前くらいは知っている有名なケーキだけど、なんというか、地味・・・。
ふつう、バースディケーキといえば、白い生クリームとイチゴで飾られたショートケーキを想像する。もしくはチョコレートケーキとか。
なんで、記念すべき20歳のバースディのケーキがこんなに地味なんだろう、よっぽど好きなのかな。

「ショートケーキじゃないんだ・・・」

思わずつぶやく。

「そう、いつもはショートケーキなんだけど、今日は特別だから」

うーん、いつもは定番のショートケーキなのに、なんで今日はバウムクーヘン?イチゴショートのほうが可愛くて美紅に似合ってると思うんだけどな。

「バウムは木、クーヘンはケーキ。木の年輪に似てるでしょ。だから、ドイツでは誕生日によく食べられているらしいの。この層を作るためには生地を焼いては巻き、焼いては巻きを繰りかえさないといけなくて、すごく手間がかかるのね。なんとなく、それがあたしの今まで生きてきた1年1年みたいに思えて」
「へえ・・・」
「このあたりかな、蒼くんと会ったの」

言いながら美紅がバウムクーヘンの外側の層を指差す。すごく薄いな。
こうしてみると、美紅と俺が一緒にすごした時間は今までの美紅の人生のほんの一部に過ぎないんだな、と思う。
これからは、ずっと美紅の人生に寄り添って生きていきたい。
1年1年、その厚みを増してゆく木のように、ずっと一緒に。

「リンデンバウム・・・」

美紅が小さくつぶやいた。

「バウムクーヘンってね、リンデンバウムを模したものって説があるの。日本語で菩提樹。神様の宿る木って言われていて、昔はリンデンバウムの木の下で裁判が行われていたんだって。神様の前で嘘はつけないでしょ、だから」

神様の前で嘘はつけない。
心が揺り動かされた。

「ベルリンにはウンター・デン・リンデン通りって有名な道があるの、菩提樹の下っていう意味。その名の通りに菩提樹の並木道ですごくきれいなところなんだって、おねえちゃんから聞いたことがあって、あたしもいつか行ってみたいなあ、って思ってるの」

菩提樹の並木道か。
俺も行ってみたい。
いつか、美紅と一緒に菩提樹の木の下を歩けたら・・・。

「あは、でもあたしドイツ語はできないんだった。今から勉強しようかな、ナイフもってくるね」

美紅が席を立ってキッチンに向かう。

ひとつ、深呼吸。
俺は、数日前から用意しておいた小さな包みをチェストから取り出した。
運命の女神がいるのなら、今、降りてきてほしい。
この、小さな菩提樹の切り株に。



やっとバウムクーヘンがでてきた(ほっ・・)
運命の女神に蒼くんは何を祈っているのでしょうか。
続きは次回に・・・。

ゆめいろ・バウム Part9 Engagement

Part9 Engagement


「お待たせ、蒼くん、お茶も淹れてきたよ」

ミルクティーとケーキ皿、ナイフをトレイに載せた美紅が戻ってきた。

「ああ、ありがとう」
「あ、そうだ。バウムクーヘンにはロウソク立てられないけど、やっぱりキャンドルほしいなあと思ってこれ買ってきた」

そう言うと、美紅はバックから紙袋を取り出した。その中から出てきたのは、可愛らしいグラスに入った、赤と青のキャンドル。

「アロマキャンドルなの、可愛いでしょ。蒼くんの青と、あたしの赤」
「そうだね。美紅、そこ座って」
「うん」

正面に座った美紅の顔を見つめる。
深呼吸したのに、まだ胸の動悸が治まらない。
落ち着け、きっと運命の女神は味方してくれる。

「20歳おめでとう、これ、プレゼント」

俺はさっきチェストから出した紙包みを美紅に手渡した。

「わあ、ありがとう」

美紅が嬉しそうに言って、包みを開ける。中に入っているのは、掌に載るくらいの小さな箱。

「これ・・・」

美紅が箱を開ける。

「可愛い・・・」

言いながら美紅は愛おしそうに微笑んだ。

「指環、いいの?高かったでしょ」
「いや、半貴石だし、台もシルバーだから、そんなに高いもんじゃない」

プレゼントに選んだのはローズクォーツの指環、アクセサリーとしては安いほうだと思う。とはいっても俺にとっては半月分の食費だけど。

「すごくうれしい。このペンダントとお揃いでつけられるね」

そう、初めてのデートのときにプレゼントした、ローズクォーツのペンダント。それ以来デートのときはいつもつけてきてくれていて、今も美紅の胸元で揺れている。
愛の女神・アフロディーテの石と呼ばれていて、恋愛に効くパワーストーンだと、あとで美紅に聞いて知った。

「ねえ・・・」「あの・・・」

言葉がかぶってしまった。美紅と俺の間でこういうことは珍しい。お互いわりと相手の言葉を待つほうだから。

「蒼くんからどうぞ」
「いや、美紅から。レディーファーストで。バースディだし」
「じゃあ・・・」

美紅ははにかんだような表情で俺を見て、指環の入った箱を俺に手渡した。

「指環、嵌めてくれる?」
「え?」

驚いた・・・。

「どうかした?」
「あ、いや。今、俺“指環、嵌めさせて”って言おうと思ってたから」
「そうなんだ、よかった・・・。同じ気持ちで」

僅かに頬を染める美紅がとても可愛くて愛しい。
俺はケースから淡いピンク色をしたローズクォーツの指環を取り出した。

「じゃあ、左手、出して」

差し出された白い手。細い手首をそっと握る。
すんなりとした、形のよい美紅の5本の指。
どの指にこれを嵌めたいか、答えは決まっている。
まっすぐに心臓に繋がっていると信じられてきた、神聖な指。
意を決して、俺は美紅の薬指にそっと触れた。
そして、そのまま手にした指環をゆっくりと嵌めてゆく。心臓が破裂しそうに高鳴っていた。
愛の女神の石が嵌められた、美紅の薬指。
そこにそっとキスする、思いを込めて。

「美紅・・・」

美紅は無言でこちらを見つめる。
驚いているような、戸惑っているような表情だった。

「俺は美紅が好きだ、愛してる。この思いは一生変わらない」
「ほんとに・・・?」

美紅の声が小さく震えているのがわかった。

「神様の前で嘘はつけない」

本物の菩提樹ではないかもしれない。でも、美紅が生まれたこの日に神様の木がここにあって、俺たちはともに同じ時を過ごしている、これはきっと運命だ。

「結婚は美紅としたい、昼間そう思ったんだ。でも、言えなかった。そんなのまだ早すぎるって美紅に言われたし、断られるのが怖かった。だけど、神様の木の前で自分の気持ちを誤魔化すようなことはしたくない。確かにまだ早いかもしれない。美紅はまだ全然結婚なんて考えてないのかもしれない。でも、今言いたいのは俺の気持ちが・・・」

言い終わらないうちに、美紅が俺にしがみついてきた。
その体をしっかりと抱きとめる。
感じるぬくもり、決して離さない。

「昼間、ごめん。あたしも怖かったの・・・」
「怖い?何が?」
「蒼くんが結婚は、って言ったあとに、まだ全然考えてないって言うんじゃないかと思って。それがいやで自分で言ったの、まだ早すぎるって」

そうだったのか。
自分の気持ちは、わかる。だけど相手の気持ちは、はっきりと見えるわけじゃない。
本当は俺たちの気持ちに温度差なんかなかったんだ。
でも、お互いそのことに気づかなかった。
今、互いに自分の思いを口にするまで。

美紅の柔らかな頬に触れ、唇を重ねる。
互いの思いを重ねあわせるように。





やっと通じました。てか、蒼くんも気づいてなかったですね、美紅ちゃんの真意に。
ええ・・・
恥ずかしいですとも。

ゆめいろ・バウム 最終話 未来図

最終回です、いつにも増して恥ずかしい話にお付き合いくださり、ありがとうございます。


最終話 未来図


「そうだ、ケーキ忘れてた。ミルクティー冷めちゃうね」

ナイフを握った美紅の手に、自分の手を重ねた。

「蒼くん?」
「一緒にナイフ入れよう、今日の記念に」

美紅が大きく目を見開く。
お互いが何を考えているか、今は通じ合っている気がする。

「うん。だったらキャンドルも一緒に灯したいな」
「そうだね・・・」

美紅に頷き返して、ケーキにナイフを入れ、小さなトーチで2本のキャンドルに火を灯す。
ささやかだけど、結婚式気分。
キャンドルの灯りに浮かぶ美紅の顔は何時にも増して可愛くて綺麗だ。
そっと唇を合わせる。

「大好き、愛してる」
「うん、あたしも愛してる、ずっと変わらずに蒼くんだけ」

幸せな気分がどんどん満ちてきて、溢れてしまいそうだ。

切り分けて皿に載せたバウムクーヘンを美紅が俺の前に置いてくれる。あれ?

「美紅、指環、回ってる」
「あ、ほんとだ」

石が手のひらの方にいってしまっている。

「ごめん、サイズとかわからなくて。かなりゆるいな」
「うん、でもサイズは直してもらえるから。だけど落としそうで怖いな。うーん、でもずっとつけていたいし・・・。サイズ直してもらうまで他の指にしていてもいい?」
「うん、いいよ」

美紅は頷くと、指環を右手の中指に嵌めた。ちょうどぴったりくる。

「美紅・・・」
「なに?」
「指環はそのまま、その指にしていていいよ。ぴったりだし」
「え?でも、せっかく左手の薬指に嵌めてくれたのに」
「だからそれは今のところ二人だけの秘密。恥ずかしいだろ、塾で」
「あ、忘れてた。アヤカちゃん・・・」

そう、バイトでアヤカちゃんたちに会ったときに左手の薬指に指環をしていたら何か言われる可能性は高い。ことにアヤカちゃんは目ざといし。

「それに、正式な婚約指環はちゃんと就職してもっと稼げるようになってから贈るよ。約束する」

婚約指環が1万円台なのはあんまりだ、と思う。

「あたしはこれで十分なのにな」

美紅は名残惜しそうに指環を見つめている。こんな安物の指環をそこまで喜んでくれる美紅の気持ちがとてもうれしい。

「じゃあ、この指環はこのままにしておくけど、あたしの左手の薬指にはずっと嵌ってるから、見えないけど・・・」
「うん、それでいいよ」

他の誰にも見えないair ring。
ふたりだけの秘密、それも楽しい。

いつか、きっと。いや、近い将来。

美紅とペアのマリッジリングを嵌めて、ウンター・デン・リンデン通りをふたりで歩きたい。
口の中でやわらかくほどけてゆくバウムクーヘンを味わいながら、俺はそんな未来図を思い描いていた。

夢は、かなう・・・
きっと・・・


                                  END




ははは・・・恥ずかしいですね、相変わらず。
ふたりの新婚旅行先はドイツで決定ですね、きっと。
読んでくださった方、ありがとうございます。

ゆめいろ・バウム プロローグ +すてきいただきもの公開!

ようやくちょっと時間がとれるようになりました。
ので、素敵ないただきもの、その1公開です。
で、せっかくなので、それにあわせてちょっと短いのを。
これは、この前書いた「ゆめいろ・バウム」のプロローグ、ファーストシーンのちょっと前の話。
美紅ちゃん目線です。
すてきいただきものは最後のお楽しみということで。焦らしプレイですみません。



ゆめいろ・バウム プロローグ 着信音


子供のころ、あたしは携帯電話が大嫌いだった。
あの小さな機械がありえないほどの大きな音で持ち主を呼ぶ。
そして、
持ち主が通話ボタンを押すと5分以内に持ち主はあたしの前からいなくなる。
お父さんのときもあるし、お母さんのときもある。
たまにだけど、時間差で両方いなくなることもあった。

9歳から19歳まで、あたしの誕生日に家族がそろったことはない。
それは、仕方のないことだ。
お父さんもお母さんも責任ある仕事をしてるんだ、そばにいて欲しいと思うのはあたしのわがままだ。
だって、あたしはお父さんがいないとすぐ死んでしまうわけでもない。
お母さんがいないからってすぐ自殺したくなるわけでもない。
でも、お父さんの患者さんや、お母さんの依頼人はそういう立場の人ばかりだ。
あたしは大丈夫。
健康だし、事件に巻き込まれているわけでもないし。

だけど。
おねえちゃんが留学していた17歳の誕生日。
たったひとりで食べたバースディケーキは、甘くてふわふわなのに、とっても味気なかった・・・。


携帯電話はあたしの好きな人を連れ去ってしまう、意地悪な機械。ずっとそう思ってきた。
でも、今は・・・。

着信音・・・。
お父さんのじゃない、お母さんのでもない。
あたしの携帯電話。
通話ボタンを押す。
流れてきたのは、あたしの大切な人の声。

「はい、蒼くん?」
“もしもし、美紅?もうすぐ駅に着く。電車乗って、あと15分くらいでそっちにいけると思う”
「うん、待ってる。一階のカフェテリアね、じゃあ・・・」


待ち合わせ場所について、アイスカフェラテを飲みながら彼を待つ。
と・・・
また携帯が鳴った。

「もしもし・・・」
“美紅?今ついた。すぐ行くから・・・”
「うん・・・」

もう、見えてるけど。

あたしに向かって駆けてくる、大好きな人。


子供のころ、あたしは携帯電話が大嫌いだった。
でも、今は嫌いじゃない、というより、好き。
だって、携帯はあたしの大好きな人を連れてきてくれるようになったから。


明日はあたしの20回目の誕生日。
“日付の変わる瞬間を二人で迎えよう”
そう言ってくれたのは・・・

あたしの
一番大切なひと・・・。


                         END


読んでくださったかた、ありがとうございます!
そして、お待たせしました。
超すてきいただきもの大公開です。こちらです↓


matoryo2.png


びたみんさんから描いていただきました。
美紅ちゃんです!
もうめちゃめちゃ可愛いですね。蒼くんがものすごくうらやましいぞ!
美紅ちゃんには8分の1、ロシア人の血が流れているのですが(お父さんのお祖母さんがロシア人)たまたまついったーでそんなことをつぶやきましたら、びたみんさんがロシアの民族衣装の美紅ちゃんを描いてくださったのですよ。
びたみんさんいつもすばらしいイラストをありがとうございます。
うれしいです、感激です。どれだけ感謝しても足りません。
いやもうしあわせすぎる・・・。

ゆめいろ・バウム エピローグ+すてきいただきものその2

すてきいただきものその2です!
その前にプロローグ書いたのでエピローグ。
これにて「ゆめいろ・バウム」終了です。
もうひとつくらい番外編があるかも、そのうち書こうかな。

いただきものは、小説のすぐ後です。
またしても焦らしプレイwww


ゆめいろ・バウム エピローグ  I'll Be Back Here


「美紅、そろそろ時間じゃない?」
「あ、ほんとだ」

時計の針は4時35分過ぎを指している。
ここから塾までは10分くらい、あたしの担当は5時からだからあと5分で出ないと間に合わない。

そうだ、昨日の服、ハンガーにかけたままだった。たたんでバッグにしまわないと・・・。
あたしはあわてて荷物をまとめようとした。
すると、

「荷物、置いていったら?」

蒼くんが言った。

「持ってくるの大変だろ。重いし」

だったら化粧ポーチだけもって帰ればいいから楽だけど。

「いいの?」
「もちろん」

蒼くんはにっこり笑って頷いた。

「言ったろ、ここは俺たちの家だって」
「うん・・・」

誕生日のプレゼント、というよりは婚約の証のローズクォーツの指環をそっと撫でる。
なんだか暖かい、そんな気がした。

「じゃあ、もう出るね」
「やっぱり送っていこうか?」
「ううん、大丈夫。すぐ近くだし、今日蒼くんは6時半からの1コマだけでしょ、授業。それにほら、一緒に行くとまた・・・」
「あ、そうか。もう公表してもいいんだけどな」
「蒼くんったら、ふたりだけの秘密じゃなかったの?」
「まあ、そうだけど・・・」

そう、あたしの左手の薬指のair ringは、もうすこしふたりだけの秘密にしておきたい。
なんだかロマンチックだし。

ほんとにもう時間だ、そろそろ出ないと遅刻しちゃう。

あたしは蒼くんを見つめた。
いつもだったら「じゃあね」とか「あとでね」とか言うところなんだけど。

「いってきます」

どきどきしながらそう言うと、蒼くんは嬉しそうに笑って、あたしを引き寄せると、唇にかるくキスした。

「いってらっしゃい、美紅」

心の中がふわっと温かくなる。

あたしの家はここ。
あたしの帰る場所は蒼くん。

そうだよね・・・。


                                   END





読んでくださった方、ありがとうございます。
この作品はサブタイトルが日本語の3文字の熟語と、英語が交互になっています。
たいした意味はないんですが、ちょっとしたお遊びです。そういうの結構好きなんです、途中で苦しくなったりもしますが、それがまた快感に(おい!)

失礼しました。

はい、くだらないおしゃべりより素晴らしいいただきものをお見せしないとですね。
こちらです↓



SosukeMiku.jpg

ゆささん よりいただきました!

「ゆめいろ・バウム」の蒼ミクですよー!!婚約指環ですよー!!(大・興・奮)
でもって、ちゃんとペンダントもしてるよ、美紅ちゃん。ゆささん、そんなところまで正確に描いてくださったんですね、うううう、うれしい!!!!

ほんとに、な、なんて可愛いカップルなのー!!!
きゃあ、もうらぶらぶで、見てるとこっちもうれしはずかしい気分になってきます。
幸せオーラ全開です。
でも、私がだれより幸せです、眼福です!!
ゆささん、素晴らしいイラストをありがとうございます!!