千の長き夜をこえて 異説千夜一夜物語 其の一

すみません、また新しい話です。
アラビアン・ナイトをモチーフにしてますが、本家とは違う話です。
本家は、ちょっとわたしには無理だったので(背景が超過激)あくまで「異説」ということで^^;

実はこれが書きたくてブログ作ったのです。

では、以下よりスタートです。



千の長き夜をこえて


それは、昔、むかしの物語。
ペルシアのとある国に、大層美しく賢い娘がおりました。
娘の名はシーリーン。
この国の臣下の中で最も身分の高い第一内大臣の娘でありました。
今から語りますのは、この娘、シーリーンと世にも稀なる瞳を持つ孤独な少年との長きに渡る恋物語でございます。

第1章 呪われた瞳 前編

「そうしてアル・ディンとジャリスは幸せに暮らしました、って、聞いてる?ナディル」
「にゃあー」

少女に話しかけられた白猫は一声鳴くと大きく欠伸をした。

「まあ、おまえに話したところでしょうがないわねえ」

14になったばかりの大臣の娘、シーリーンは、そう言うとふうーっと息を吐き出した。
深窓の姫とはたいくつなものだ。自由な外出は許されず、訪ねてくるものもない。
唯一の楽しみは、侍女たちに自分の考えた物語を聞かせることだった。
それはとても好評で、シーリーンは次々と新しい話を考えては語り聞かせているのだが、侍女は遊び相手ではない。
仕事が忙しいときは誰も相手をしてくれず、仕方なく可愛がっている白猫のナディルに話を聞かせていたのだが、いかんせん猫は猫。まともに話を聞いてくれるはずもない。

「つまらない。私も物語の中の姫のような恋がしたいのに」

だが、屋敷から出ることもままならぬ窮屈なわが身では、到底無理なことに思われた。このまま、そう、初恋も知らぬまま、あと数年で父の決めた相手のもとに嫁ぐことになるのだろう。そして、一生窮屈な生活を強いられるのだ。
自由がほしい、恋がしたい。
それは14歳の少女の純粋で切実な願いだった。

そのとき、扉が控えめにノックされた。

「だれ?」
「ラナでございます。姫さま、湯浴みの支度ができております」
「わかった、すぐ行くわ」

シーリーンはそう答えると、再び猫のナディルのほうに向き直った。

「そうだ、ナディル。おまえも洗ってあげるわ、一緒に・・・」

言いかけたとたん

「フギャー!!」

シーリーンの意図することがわかったのか、ナディルは悲鳴のような鳴き声を上げると一目散に逃げ出した。

「あ、こら、ナディル、待ちなさい。ナディル!ああ!!」

興奮しきったナディルは開かれた窓から外へ出てしまい、焦ったシーリーンは窓辺に駆け寄った。

「え・・・」

そこにいたのはシーリーンと同じ年頃の少年だった。
透き通るような白い肌に、高い鼻梁、引き締まった口元。意思の強そうな眉の下には優しげな瞳が輝いている。
そして、
その瞳はナディルと同じ、深い緑色をしていた。

「ナディル?」

まさか、ナディルが人間に変身したのだろうか。一瞬、シーリーンはそう思った。

「なぜわたしの名を知っている?」

少年が口を開いた。
そして、シーリーンはやっとナディルが少年に抱かれているのに気付いた。

「ありがとう、そなたがナディルを捕まえてくれたのか、え、わたしの名?」

少年はくすっと笑った。
とてもやさしい微笑み、シーリーンの胸は高鳴った。

「そうか、この猫がナディルか。わたしと同じ名だ」

少年の腕の中で、居心地よさそうに目を閉じていたナディルが、同意するように、にゃあ、と一声鳴いた。




ころころ世界変えて申し訳ありません。バルト海から西アジアへ。
今回の話ではまだわかりませんが、かなりシリアスな話です。これ考えていたらはっちゃけた話が書きたくなって生まれたのが「バルト海の海賊王子」だったりします。
ある意味、表と裏のようなものです。まあ、元ネタが元ネタだけにある程度暗くなるのは仕方ないかと。

イスラム系の名前の資料がなくて途方にくれていましたら、ブロ友のいき♂さんとグロックさんが資料になるサイトを見つけてきてくださいました。
この場を借りてお礼申し上げます、ありがとうございます。



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千の長き夜をこえて 異説千夜一夜物語 其の二

千の長き夜をこえて 第1章 呪われた瞳 後編


「ああ、驚いた。てっきりナディルが人間になったのかと。いや、そなたもナディルか。瞳の色も同じだし・・・」

シーリーンがそういった途端。
少年の顔色が変わった。
無言でシーリーンに猫のナディルを返すと、瞳を伏せ、立ち去ろうとする。

「待ってくれ!」

シーリーンはあわてて止めた。
貴重な外の世界に触れたい。どうしても、もう少しこの少年と話がしたかった。
いや、それだけではない。
逢ったばかりだというのに、シーリーンはこの少年に惹かれていた。
運命の扉が開いた。そう感じていた。

少年が再びシーリーンのほうを見た。
吸い込まれそうに美しい翠玉の瞳。

「そなた、私が怖くないのか?」

少年は、その不思議な色の瞳でシーリーンの方をまっすぐ見つめてそう言った。

「こわい?なぜ、そう思うのだ?」

意外なことばにシーリーンは聞き返す。

「私の瞳は皆に呪われた瞳と言われている。こんな色の瞳はこの国のどこにも存在しないゆえ。」
「ああ、たしかに。」

シーリーンはにっこりと笑い、言葉を続けた。

「そなたの瞳は、珍しい色だな、とてもきれいだ。」
「きれい?」

少年は意外そうな表情でシーリーンを見つめた。その瞳を見返し、シーリーンは再び、彼に微笑みかけた。

「そう、とてもきれいだ。先日、父上が私に買ってくれた翠玉の耳飾りと同じ色だな。」

この国の人間は、皆、黒か茶色の瞳をしている。この少年のように緑色の瞳の者はいない。

「そんなことを言われたのは初めてだ」

少年は泣き笑いのような表情を浮かべた。

「だが、私が呪われているのは本当だ。私のこの瞳のせいで、母は命を落とした」
「母上が?」
「ああ、私の母は北の国から嫁いできたのだが、私がこのような瞳を持って生まれてきたため、母は父に不貞の疑いをかけられ、父によって幽閉された。そして母はそこで自らの命を絶った。身の潔白を訴える手紙を残して」
「そ、んな」
「命を賭した母の抗議は認められた。だが、父は未だに私を嫌い、決して会おうとはせぬ。供のものもみな、内心では私を恐れておる。呪いがわが身に降りかかることを懸念しておるのだ。」
「そんなことはない!」

シーリーンは叫んだ。

「そなたは何もしておらぬではないか!間違っておるのは、父上と供のものたちの方だ!」

少年は翠玉の瞳で、じっとシーリーンを見つめた。胸が高鳴る。シーリーンにとって初めての感覚だった。

「ならば、そなた私の妻になれるか?」
「え?」

あまりに唐突な少年の言葉にシーリーンはしばし声を失った。

「いや、すまぬ。そんなことをすれば、そなたの身に呪いが降りかかるやもしれぬ」
「なる!」
「え?!」

今度は少年が言葉を失う番だった。

「そなたは呪われてなどおらぬ。私がそれを証明してみせる。」

シーリーンは窓から身を乗り出して言った。

「本当に?私でいいのか。もし不幸になったりしたら・・・」
「ならない、そなたとふたりでいれば、きっと私は幸せだ」

少年はにっこり笑って頷き、その笑顔の美しさにシーリーンは魅せられた。

そして、

ふたりはどちらからともなく顔を寄せ合い、そっと唇を重ねた。

そのとき、

「ナディルさま!ナディルさま!!何処におわします!」

男の声がした。

「いけない、戻らないと」

その場を去りかけ、少年はもう一度名残り惜しそうにシーリーンの方を見た。

「いずれ、また」

少年の言葉にシーリーンはしっかりと頷き、その後姿を見送った。
近いうちにきっとまた会える、そう思っていた。



これが・・・
シーリーンとナディルの出会い。
幼いながらも、いや、それだからこその純粋な思い。

だが、この出会いは、ふたりにとって長い、長い夜の始まりでもあった。
そして・・・
それは、シーリーンもナディルも、このときは知る術のないことであった。




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レオンといい、ナディルといい・・・。
いきなりプロポーズって、どれだけせっかちなんでしょうか、うちの男キャラはww
この話は不定期連載になります。
コンスタントに書くにはエネルギーがいる話なので。
でも、まあ、たまにはシリアスな話も書きたいのですよ。


拍手たくさんありがとうございます。続きから返信です。

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