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イチゴシロップの追憶 後編

今回で最後です、お付き合いありがとうございます。



イチゴシロップの追憶 後編


「でも思ったより顔色いいわね。ロクなもの食べてないと思っていたのに」
「うん、まあ、わりと家で食べることが多いから」
「へえー」

母がニヤリとした。
い、今うっかり盛大に墓穴を掘った気が・・・。

「目玉焼きも満足に作れなかったくせに随分と成長したものねえ・・・」

やばい、話題変えないと。えーと、何か・・・と考えているうちに敵は速攻を仕掛けてきた。

「彼女出来たの、白状しなさい!」

だからオバさんはいやなんだ!絶対にこっちの隙を見逃してくれない。

「はい、出来ました。時期は今年のバレンタインです、チョコもらったんで告白しました。それから交際してます。同じ年です、ときどき飯作りに来てくれるので感謝してます。報告終わり」

報告は正確かつ簡潔に、これが基本だ。

「つまんない報告ねえ、あんた文系苦手だったもんね」

大きなお世話だ。

「まあいいか。じゃあ写メ送ってよ」
「目の前にいるのに何でメールするんだよ」
「彼女の写真送って」
「お断りします」
「なんでー、ケチ」
「写メなんか送ったら、どこに転送されるかわかったもんじゃない。どうせ近所のオバさんから親戚にまで、“これが蒼祐の彼女です、可愛いでしょ”とか一斉送信するつもりだろ」
「そこまでやらないわよ。信用ないのねえ」

どうだか。とにかく大事な美紅の写真を話し好きのオバさんに送るなんて絶対にイヤだ。

「だったら、せめて写真だけでも見せてよ、可愛いんでしょ」

どうでも写真見せないと納得しないらしい、困ったもんだ。
仕方なく俺は携帯を開いた。

「はい、これが俺の彼女です」
「どれどれ、うわ、ほんとに可愛い、お人形さんみたい」

うんうん、そうだろう。

「あんたには勿体ないわねえ・・・」

一言余計です、お母さん。

「でも、安心した」
「なにが?」
「元気で、可愛い彼女も出来て、新しい目標に向かって頑張ってるんだな、って思って」
「うん」

また、風鈴の澄んだ音が響いた。

イチゴシロップのかき氷を食べていた夏に夢みていた未来。
それは、叶わなかったけれど。

今、新しい目標に向かって頑張れている。

Restart・・・

ここから、新たな目標に向かって再スタートを切ろう。

まだ口の中に微かに残るイチゴシロップの甘い残り香。
それを感じながら、俺は改めて思った。



                       END



美紅ちゃん、写真しか出なくてすみません・・・。
これに関連する話はもうひとつあります。





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イチゴシロップの追憶 (中編)

中編です。前よりちょっと長いのは切るところを間違えたからです・・・
ちょこっと蒼くんの過去が出ます。


イチゴシロップの追憶 (中編)


一瞬、何を聞かれているのかわからなかった。でも、この流れだと、かき氷のシロップのこと言ってるんだろうな、きっと。

「あのね、母さん」
「なに?」
「イチゴとメロンどっちがいいかって、小学生じゃあるまいし、自分より20センチも背が高い息子に言う台詞じゃないだろ!」
「だってさっき冷たいもの欲しいって言ったじゃない」
「だからそれは麦茶とかアイスコーヒーとか、とにかく20歳にもなってかき氷はない」

母は不満そうな顔をして俺の顔を見上げた。
美紅よりだいぶ背が低いな、やっぱり時代かな、とか思ったりする。

「いいじゃない、たまには息子らしくしてくれたって」
「どういう意味?それ」
「ええ、確かに大きくなりましたよ。いつの間にか見上げなきゃいけない背丈に成長しました。でもね。ちょっとさびしいんだから」
「さびしい、なんで?」
「小5であんたが県の強化選手に選ばれてから、急に忙しくなっちゃって、ゆっくり家で過ごす時間なくなったじゃない。中学からは寮に入って滅多に帰ってこないし、大学は東京で、一緒にいる時間なんてほとんどなかった。ちょっと前まで私の胸までくらいしか背がなかったのに、気づいたら見上げる高さになってて。いつ抜かれたかもわからないなんて、本当にさびしいものよ」
「それはまあ、確かに・・・」
「やっと少しは時間がとれるようになったんだし、かき氷くらい食べてくれてもいいでしょ」
「母さん・・・」

そういえば、今まで本当に全力で駆け抜けてきたように思う。
高2まではサッカーがほぼ生活のすべてだったし、3年になってからはこれまでの分を取り返さないと、と思って必死で受験勉強してきた。
全く周りに目を向ける余裕なんてなくて、母さんにさびしい思いをさせていたなんて全然気付かなかった。

「じゃあ、イチゴでお願いします」
「はい、わかりました」

母は張り切って冷蔵庫から氷を持ってくると、嬉々として氷を削り始めた。
シャリシャリという氷を削る音、こんな感じだったっけ。
弟と二人で母の手元を見ながら氷が器に溜まるのを待ちかねていた、遠い記憶。

こんもりと白く盛られた氷の上にルビー色のイチゴシロップがかけられる。

「はい、出来上がり」

母の声とともに完成したかき氷が差し出された。
本当に何年ぶりだろう。

スプーンを差し込むとサクッという音、これだけでも涼しくなる。
そして、口に入れた瞬間に冷たい刺激と甘酸っぱいイチゴシロップの味がいっぱいに広がった。
そのとき、ふわりと一陣の風が吹き抜けて、軒下に吊るしてあった南部鉄の風鈴を揺らした。澄んだ音色が響く。
久しく忘れていた、懐かしい、夏の味、夏の音。
そうだ、これを最後に食べたのは小4の夏だった。
あれから、もう10年経ったのか。

今まで、必死に走り続けてきたけれど、ここらで、少し休んでもいいのかもしれない、そんな気がしてきた。
子供の頃のように。
一日中、飼育ケースの中のカブトムシを眺めていた頃。
線香花火の小さな炎が落ちるまで、食い入るように見つめていた頃。
そこにはいつも、母の笑顔があった。
自分ひとりで大きくなったわけではない、改めて思い知らされた。

お母さん、ありがとう・・・

とか、恥ずかしくてとても口に出しては言えないけれど。

「これから、出来るだけ帰るようにするよ」

と、珍しく殊勝なことを言ったら

「それはそれで面倒だけどね」

と、返された。

ふん、もう二度と言ってやらねえ!と思ったけど、きっと母さんも照れくさいんだろうな。
イチゴ味のかき氷をかきこみながら、俺はそんなことを考えていた。


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母と息子。
ちょっと照れくさいながらも憩いのひとときですねw
強化選手云々はフィクションです。あったらいいとは思いますが、国にしろ地方自治体にしろ、あまりそういうところに金出さないからなあ、多分ないんじゃないでしょうか。知ってる方がいらしたら是非教えてください。
まあ、別にサッカー小説じゃないんで、その辺りは温かい目で見てやってください^^;
もし、そういう制度があったとしたら、蒼くんはそこに入れるくらいの実力があったということですね。
明日でこの話は終ります。
なんで選手をやめたのかは、また別の機会に・・・

イチゴシロップの追憶(前編)

蒼ミク番外編です。
蒼くんの休日。実家に帰省中のひとコマ。
まあ、夏休み特別編みたいな感じ。



イチゴシロップの追憶・前編


8月9日、月曜日。
今日からバイトは1週間の盆休みに入る。
夏休みに入っても、貧乏暇無しで、相変わらず忙しい生活を送っている俺には久々の休日だ。
こんなときこそ、美紅の可愛い笑顔を見ながらゆっくりとくつろぎたいところなんだけど、美紅は今日から3日間、お母さんの実家に帰るとかで不在なのだった。

3日間も一人でアパートに篭っているのも侘しいので、俺も久しぶりに実家に戻ることにした。


新幹線から在来線に乗り換えて30分。
駅から実家への道を歩くのは正月以来だ。
15分ほどで、同じような家が立ち並ぶ住宅地にたどり着いた。ここの一角に、俺の生まれ育った家がある。
4LDKのごく平均的な住宅は美紅の家の壮麗さとは比べるべくもないが、俺にとっては懐かしい我が家である。

ドアフォンのボタンを押すとすぐにドアが開いた。

「おかえり!」

出迎えてくれたのは橘ゆかり、俺の母親だ。
今年43歳、年齢(とし)のわりには若いと思う。
でも、正月に帰ったとき、褒めたつもりでそう言ったら、「年齢のわりに」は余計だと怒られた。なんだかいろいろと面倒くさいよな、女って。

「ただいま」
「外、暑かったでしょ」
「うん。このところ猛暑が当たり前みたいになってるよな。何か冷たいもの欲しい」

言いながらリビングに向かう。こじんまりとしているけど、落ち着く。
正直、帰るまではおっくうだと思っていたけど、ソファに座るとほっとした。
ここもまた自分の家なんだと感じる。

「座る前に手を洗いなさい、まったく毎回同じこと言わせないで頂戴」
「はいはい、わかりました」
「はい、は一回!」

こういう面倒な会話も久しぶりだとちょっと新鮮だったりするから不思議だ。

洗面所で手を洗ってリビングに戻ると、母がダイニングテーブルの前で手招きしている。何の用だろう。

「ねえねえ、これ見て」
「へえ、懐かしいな、これ、まだあったんだ」

母が指差したもの、それはアニメのキャラクターをかたどった、かき氷器だった。

「でしょー。昨日キッチンを整理してて見つけたの、まだしっかりしたものよ。きれいに削れたわよ、氷」
「ふうん」
「でね」
「うん」
「イチゴとメロン、どっちがいい?」
「はあ?」



美紅ちゃんの家族を出したので、蒼くんも。
とりあえずお母さん出してみましたw



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